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デジタル変革マーケティング

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なぜ今、ダッシュボードが必要なのか

横山隆治氏 内田康雄氏

 メディア環境がどこまでも多様化すると、もはや事前に精度の高いマーケティングプランが立てられないので、まずはある程度の仮説の枠組みの中で施策を実施してみて、こうしたデータを使いながらリアルタイムで運用し、施策を最適化することがデジタル時代のPDCAの回し方になります。

際限なく手間がかかるデータ収集

 ただし、データの入手経路が増えて、様々な領域のデータを集められるようになったとしても、データの提供企業毎にレポートフォーマットがバラバラになっていては、それをビジネスにうまく使うことができません。

 そこで実作業としては、スプレッドシートや表計算ソフトなどを使って、タコ足的に増大したマーケター側のタッチポイント(窓口)からバラバラに手に入れた各データを手元のパソコンに集約し、分析しやすいレポートフォーマットになるようにデータを切り貼りして、数値を加工する作業が発生することになります。

 こうした手間暇がレポートを作る度に毎回発生するため、分析頻度を上げる試みや、メディア接点を束ねて広い範囲で分析を行おうとする試みは大抵定着しないまま、一度きりで終わってしまいます。さらに、レポートに紐づけるデータの範囲や量が増えるほどレポート作成のプロセスも煩雑化して、後任者への引き継ぎが難しい状況に陥ることになります。

 このように際限なく手間がかかる状態では、広くマーケティングの「打ち手」を講じて成果がきちんと組織の中で評価され認知されたとしても、その検証まで含めた取り組みを持続させることができません。

 そもそもKPIを毎日捕捉している状態を作れなければ、機動的な「打ち手」は取れません。そのため発想の転換が必要であり、「施策」から後付けで「データ」が出てくるのではなく、ダッシュボードの中に常時意思決定に必要なデータが複製されて取り込まれ、「いつでもデータを分かりやすい形で引き出せる状態」にしてあって、そこに「施策」が連動する状態にすべきなのです。

 といっても、そこまで大量のデータが見えている必要はなく、リアルタイムな運用ができるようなKPIが決まっていて、まずはそれを時系列で競合との比較で日々把握しているだけで、データの変動の中から何か手を考えることができます。デジタル変革時代の「高速PDCA」は、このように、プランニングも、アクションも、全てリアルタイムにデータ(KPI)が見られる身軽な状態から生まれてくるものです。

 こうした理由から、データドリブンなマーケティングを行うにあたって、データソースとダッシュボードがライブ接続されていて、データを取ってきてからレポートを出すまでの間、できるだけ人手を介在させないように作業工程を半自動化することは、リアルタイム性の実現において大変重要になってきます。

図表1 マーケティングダッシュボードで複数のデータソースから収集したKPIの動向を 集約、直感的に可視化した例。繁忙期に実施したキャンペーンについて、様々な角度から振り 返り、検証できる ©Datorama ©Datorama

 別の観点として、新卒者などを現場に放り込んで、ひたすら周りから依頼されるルーティンのデータの集約化や集計加工仕事をやらせることは、人がデータを使いこなすのではなく、データに人が縛られて、精神的に摩耗していくことに繋がります。このように、「頭を使うこと」とは別次元の単純作業を「修行」のように長期間こなしていくことが、ビジネスパーソンとしてのスキルアップと次のキャリアの育成に繋がるかには疑問が残ります。

 まずは内向きの視点で、データの管理や加工に伴うオペレーション業務をシステムにより自動化・省力化し、リアルタイムのモニタリングに向けて労働集約の状態を脱却する。それを実践するために、マーケティングダッシュボードを導入して、人が育つ仕組みを用意することはデジタル変革の中で初期に手がけるべき優先度が高い取り組みになってきます。

横山隆治・内田康雄著 『デジタル変革マーケティング』(日本経済新聞出版社、2017年) 第2章「なぜ今ダッシュボードが必要なのか」から

横山 隆治(よこやま りゅうじ)

デジタルインテリジェンス代表取締役。1982年青山学院大学文学部英米文学科卒。同年旭通信社入社。96年デジタルアドバタイジングコンソーシアムを起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2001年同社を上場。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。08年ADKインタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。10年デジタルコンサルティングパートナーズを主宰。11年デジタルインテリジェンス代表取締役に就任。『CMを科学する』『リアル行動ターゲティング』など著書多数。

内田 康雄(うちだ やすお)

デジタルインテリジェンス データドリブン・ストラテジスト。2007年早稲田大学教育学部卒。同年デジタルアドバタイジングコンソーシアム入社。ウェブ解析の導入活用支援、ROIトラッキング領域の専門家として活躍。13年デジタルインテリジェンスに入社。大手法人向けに、マーケティングを最適化するためのデータ分析やテクノロジーの導入運用等のコンサルティングを行っている。Digital Analytics Association認定Web Analyst、日本交渉協会認定交渉アナリスト。

デジタル変革マーケティング

著者:横山隆治・内田康雄
出版:日本経済新聞出版社
価格:3,024円(税込)

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