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グローバル競争を勝ち抜く組織・人事

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AI時代に求められる働き方と人事制度

樋口美雄・慶大教授 × マルセロ・モディカ・米マーサーCPO 対談

モディカ 実際にそういうケースは起きています。これまで企業は収益目標を掲げて成長してきましたが、ここへ来て社員の働きやすさを充実させることに力を入れるところが増えてきました。長期休暇や育児、出産休暇、それも母親だけでなく父親や養親も対象とすることで優秀な社員を引き留める。実際、そうした企業が収益も上げています。

樋口 もしかすると、米国は社会全体の構造が変わりつつあるのかもしれません。リーマンショック後も失業率は高いわけではないが、大きく減少した就業者はさほど大きく増えていない。その結果、女性を中心に職探しをあきらめた非労働力が増えているのです。かつては労働市場の流動性が高く、転職は容易だったのですが、国際化や技術の変化によって企業も社会も変化を余儀なくされています。個々人の評価によるスクリーニングは、ある意味で格差の問題にもつながりかねず、この傾向が今後も進むのかどうか、非常に注目しています。

 一方で、日本はずっと一律にすべての社員に同じ制度を提供し続けています。平等とはみんな同じことであるという価値観でやってきました。しかし、グローバル化やダイバーシティーの進展により、処遇やフリンジベネフィットも多様化するのは避けられません。それを個人個人が認められるようになるかどうか。また、企業がすべての従業員に満足のいく施策を提供できなくなった場合、国の制度としてセーフティーネットや社会保障制度をさらに充実させていく必要も出てくるでしょう。

ギグ・エコノミーが急速に拡大

モディカ 世界的に長寿命化が進み、いま生まれた子どもは100歳まで生きるのが当たり前になるとも言われます。当然、退職後の生活も大きく変わり、これまで十分と思われていた保障が役に立たなくなる可能性もあります。いや、むしろ現在の法律や制度が、退職後も長く働きたいと考える人々の可能性を阻むような事態も懸念されます。

 ギグ・エコノミー(Gig Economy = インターネットなどを通じて単発の仕事を受注する働き方とそれによって成り立つ経済形態)と呼ばれる社会の到来を受け、「自分の条件はこうです」と提示して短期間の仕事を引き受ける人が増えています。特に退職後、自分の専門性を生かし、顧客の要望があった時だけ働くオンデマンドの働き方が注目されています。1週間にせいぜい10~20時間働ければ十分であり、そうした働き方が気に入っている人は増えている。顧客にとってもニーズを満たしてくれるわけで、お互いにメリットがあるわけです。社会全体もますますフレキシブルになっていくでしょう。

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