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AI時代に求められる働き方と人事制度

樋口美雄・慶大教授 × マルセロ・モディカ・米マーサーCPO 対談

樋口 私は海外の企業が日本に進出した場合の人事制度のあり方に関心があって調べてきました。最初は自国の雇用システムを日本に持ち込もうとするのですが、だんだんと日本のやり方に近づいていく場合が多い。その方が人材活用や生産性の向上に有益だと判断するようになるからです。

 同様に日本企業が海外に進出した場合も、現地の実情に合わせて雇用制度を変えていく必要があります。また、今までは経験と勘に頼る部分が多かったと思いますが、今はビッグデータや人工知能(AI)の時代です。こんな制度を取り入れたら社員の定着率が改善したとか、生産性が上がったといった結果をリアルタイムで把握し、実験的に評価しながら進めることも可能になってきました。

1つの企業に複数の雇用制度も

マルセロ・モディカ氏(Marcelo Modica)<br>

米マーサー シニア・パートナー Chief People Officer<br>

マーサーのChief People Officer(最高人事責任者)としてグローバルマーサーを統括するエグゼクティブ・リーダーシップ・チームの1人。マーサーの人材戦略の立案と執行を担当し、人材育成、タレントマネジメント、報酬、配置、従業員コミュニケーションなど人事領域のすべてを統括。JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーやリーマンブラザーズなどの各社において人事担当を歴任し、2012年よりマーサーにて現職。

マルセロ・モディカ氏(Marcelo Modica)
米マーサー シニア・パートナー Chief People Officer
マーサーのChief People Officer(最高人事責任者)としてグローバルマーサーを統括するエグゼクティブ・リーダーシップ・チームの1人。マーサーの人材戦略の立案と執行を担当し、人材育成、タレントマネジメント、報酬、配置、従業員コミュニケーションなど人事領域のすべてを統括。JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーやリーマンブラザーズなどの各社において人事担当を歴任し、2012年よりマーサーにて現職。

モディカ マシンラーニング(機械学習)やAIといったテクノロジーの進展は、生産性を上げる大きな助けになります。人は単純な作業の繰り返しから解放され、より付加価値の高い作業に従事できるようになります。また、グローバル競争が激しくなるなか、企業は限られたリソースで最大の価値を生み出す必要性に迫られています。このため、自社が提供できる最も重要な価値とは何かを見つけ出し、それ以外の事業は外部に委託するアウトソーシングも増えています。

 そうすると会社の組織が変わり、そこで働く人たちの形態も、フルタイムやパートタイム、さらにフリーランサーといったように多様化していきます。実はすでに、こうしたさまざまな働き方を楽しむ人たちは増えています。2020年には、米国の労働者の50%はフリーランスやパートタイムで働く人口で占められるという予測もあります。個人の選択肢が広がり、労働や生産性という言葉の定義も変わるかもしれません。

樋口 これまで企業は社内全体に共通する制度、たとえば終身雇用や年功賃金、あるいは成果反映型賃金といった制度を採用してきました。しかし、働く人々の価値観が多様になったり、部門単位の競争力向上を求められたりするようになると、それぞれの組織ごとに雇用制度を持つことも必要になるかもしれません。例えば、生産部門は日本の方式で、事務部門などホワイトカラーは米国流で、海外部門はシンガポールのやり方で、というように最適の方法を取り入れる。つまり、一つの企業に複数の制度が存在することになり、場合によってはそれぞれの事業を分離する可能性も出てくるでしょう。

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