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人材育成へ企業の枠超えて「異動」~広島県安芸高田市~

日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 渡辺 綱介氏

 広島県安芸高田市は、広島市の北東に位置する人口約3万人のまちです。2004年に旧高田郡の吉田町、八千代町、美土里町、高宮町、甲田町、向原町が合併して生まれました。農業や林業が盛んなほか、県下の有力企業であるマツダの下請け企業をはじめ輸送用機械、金属製品関連などの工場が立地しています。

 しかし、人口はこの20年で約6,000人減少しており、高齢化率も高まっています。同市では、人材の採用や定着に悩む地域の企業同士で連携し、人材を交流し合うという新しい試みがなされました。どのようにしてそれが生まれたのか、課題は何かをみていきます。

<広島県安芸高田市の概要>

地域の外からきた経営者が直面した課題

 地域の企業間で人材を交流する。

 この構想は、安芸高田市に本社を置く鋼材加工業のフリーエム(従業員数40人)の社長、有田耕一郎さんが生んだものです。有田さんは、大手商社に18年勤務した後、取引関係にあった同社に2000年に入社、2009年から社長を務めています。

 大都市圏・大企業に出ていく学生が多く、採用できても離職が多い。有田さんが安芸高田市にやってきて直面したのは、人材の採用・育成・定着に苦慮する中小企業の現実でした。

 中小企業では部署間異動も限られ、業務内容、上司・同僚・取引先との人間関係も固定される傾向にあります。逃げ場がなく、辞めてしまう従業員もいました。また、リーマン・ショック後、雇用調整のために助成金を活用して従業員を一時休業させたところ、働く意欲を失ってしまったという苦い経験もしました。

 この問題について考えていこうと、有田さんはキャリアカウンセラーの資格を取得し、学生と社会人が交流するワークショップを自主開催するなど、取り組みを始めました。そのなかで、地元企業を志望する学生と話をすると「地元で働きたいから」と言います。地元で働きたい若者はいる。でも「それは会社というより、地域に入社するということでは」という素朴な疑問を抱きました。これがヒントとなって、有田さんはある構想を抱きます。

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