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ネーミング全史

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劇的ネーミングの作り方

岩永嘉弘 氏

 ターゲットを設定することで、売り方が違ってきます。売る場所が変わってくる。デパートに陳列するのか、スーパーやコンビニに並べるのか。通販やネットマーケットでデビューさせるのか。販売の前線が違ってきます。そして、そうしたマーケット戦略が、ネーミングに反映されなければならないのです。

 広告の計画を立てるとき、一人の人物を仮想設定することがよくあります。コンシューマーを具体的に設定して、彼らに届く広告を作るためです。それと同じ試みを、ネーミング作りでもよくトライします。彼らに好感を持って共感してもらえるネーミングはどんな言葉だろう、と考えるテストパネルとして、設定するのです。

例えば、

「私立大学出身の32歳の女性。商社勤務。夫はIT関係の外資系企業勤務。結婚7年目
のいわゆるDINKs。住まいは郊外の2DKマンション。そのローン2年目。週に一度スポーツクラブに通っている。夫は学生時代ラグビー部。最近ゴルフを始めた」

 さあ、この女性に、売りたい化粧品だったら、どんなネーミングがふさわしいか。彼女にちゃんと届く効果的ネーミングは、どんな言葉で作らなければならないか。

 あるいは、この夫婦にクルマを売るなら、どんなネーミングが二人の心に訴えるか。ネーミングを見て、ウェブサイトを覗いてくれて、カーショップに試乗しに来てくれる。そんな引力を持つネーミングはどんな言葉で作ったらいいだろう。

 この二人の具体像をにらみながら、ふさわしいネーミングを作っていくわけです。この仮想人物像がその指標になるのです。ここに、もう一つ重要な意味が込められています。広告はマスコミュニケーションですが、それを見たり聞いたりするのは一人一人の個人です。新聞やネットを一人で見る。一人で聴く。マスへ発信するけれど受信は個人でする。買うというアクションを起こすのも個人一人一人です。だから僕は、マスコミュニケーションのことを、「マス個ミュニケーション」と呼ぶことにしています。

 余談ですが、だから広告コピーは個人に届く個人的な発言、個人的な言葉でなければならない、というのが僕の持論です。「皆さん」と群衆に投げる言葉ではなく、一人の人「あなた」に語りかける言葉でありたい。コピーは個人の言葉で作るべし。これがコピーについての岩永私説です。

 当然、広告の核であるネーミングにも同じことを言いたい。ネーミングが語りかけるのは、当然、個人です。マスではなくマスの中の一人一人の個人が、受け手。だから、こんなコンシューマーの個人像を仮想設定して、「個人に届く言葉作り」をすることが重要である。そう確信しています。

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