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IoTへの挑戦、成長軌道へ

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協力:KDDI

新事業開発の失敗は「じゃまオジ」が原因?

三菱総合研究所 大川真史 氏

 BtoC市場では、スマートフォンの例がわかりやすい。米アップルがこの市場で強いのは、iPhoneにアプリや音楽コンテンツ配信などの各種サービスを統合したエコシステムをつくり、ユーザーがiPhoneとサービスから得られる価値を最大化しているからである。スマホのハードウエア単体で勝負しても、いまやコストパフォーマンスに優れる中国・台湾製品にシェアを奪われる結果となっている。

 同じことがBtoB市場の中でも始まっている。大川氏は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が航空会社向けに提供しているナビゲーションサービスを典型例に挙げた。このサービスは、GE製の航空機エンジンに取り付けられた各種センサーからの情報や、天候、気圧、風向きなどの気象情報をもとに多変量解析して、「目的地まで、最も燃費が良い飛び方」をシミュレーションしてくれる。

 「格安航空会社(LCC)は燃料費削減のためにGEのサービスを利用します。そうなると、LCCが買いたい航空機は、ボーイングかエアバスかというメーカーで選ぶのではなく、GEのエンジンを搭載した機種となり、選び方が変わります。競争力の源泉が『良いエンジンをつくること』ではなく、ナビゲーションサービスのように『ユーザーが直接的に欲しい価値(燃料の節約)を直接的に提供するサービス』に変わったわけです。こうしたビジネスモデルの革新が事業構造のサービス化、デジタル化という大きな流れの中で起こっています」(大川氏)

 興味深いのは、このサービスのつくり手が航空機エンジンを製造するGEアビエーションではなく、シリコンバレー周辺にあるGEデジタルだという点だ。大川氏は、「GEデジタルには『できる』けれど、GEアビエーションには『できない』と彼らは言っています。日本の製造業もGEアビエーションの側にいますが、デジタルネイティブな人や企業なら、このような新しい価値を生むサービスの世界に自然と入り込める。それが第4次産業革命の特徴です」と語る。

【ポイント②】「ユーザー起点のイノベーション」にこだわる

 そうならば、新規事業/新サービスは「ユーザーが直接的に欲しい価値とは何か」を起点に開発していかなければならない。とことんこだわるべき点は「ユーザー起点のイノベーション」だという。

 「『良いサービスとは何か』という答えはユーザーの中にしかありません。自分たちの中に正解はないのです。でも、みんな時間をかけて考え、稟議書に書いて、上の人たち(じゃまオジたち)が良い悪いと議論しています。残念ながら、ユーザー不在の議論を何十時間繰り返しても、価値あるサービスをつくれるわけではありません。そうではなくて、ユーザーをよく観察し、プロトタイプのサービスをユーザーに試してもらって、何度も『それ違うよ』と言われながら軌道修正し続けることが正解に近づく唯一の道なのです」

 経営企画部門などが主導し、事例収集やマーケットリサーチから始めるような従来のサービス開発とは逆のアプローチとなる。

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