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IoTへの挑戦、成長軌道へ

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協力:KDDI

可能性広がるIoT時代 何回でもチャレンジできる

ユビキタス社会を提唱、東京大学教授の坂村健氏に聞く

東京五輪という"締め切り"目指し、日本は巻き返しを

――坂村氏は2017年1月、東京都の「ICT先進都市・東京のあり方懇談会」の座長に就任され、5月には提言をまとめるそうですね。スピードの遅い日本がなんとかなる糸口がつかめそうですか。

坂村 確かにそういう意味では、日本全体を変えるのは簡単ではないけど、東京都が先進的に、そして先導的にどんどんやろうとすることは、日本のためにもなるのではと思います。会議名に「ICT(情報通信技術)」と「先進都市」がついているように、コンピューターとか、AIとか、IoTネットワークを前提として、都市はどうあるべきかを議論したいですね。これまでは、まず既存の制度があって、それを変えずに新しい技術を入れるにはどうするかだったんですね。

 具体的に、今役所の手続きのためにある窓口について考えてみましょう。なぜ窓口があるのかといえば、ネットがなかったからです。しかも、窓口には紙の書類に手書きで記入し、ハンコを押して、決められた時間内に持って行かなければなりません。役所の組織がそうなっているからです。ここに、インターネットを導入すれば、窓口は不要になるでしょう。ほとんどの人がネットにつながっているスマホを持っていますから。スマホが窓口になれば、相手はコンピューターですから24時間受け付け可能で、作業効率は格段にアップします。もちろん、スマホを使わない人への対応は必要ですが。

 こうした提言を5月にまとめるのは、できることは2018年から実行に移すつもりだからです。当然2020年の東京オリンピック・パラリンピックも前提に考えています。東京オリンピック・パラリンピックのためにお金を使うのは主催する国、都としては当然なのですが、そのときしか役に立たず、あとが廃墟になるというのでは困ります。やはりレガシーという形で、その後の都民国民に役立つものでなければならないでしょう。

 例えばICTを使った外国人観光客へのサービス事業は、その後の日本人にも役に立つかどうかも考えながら、計画する必要があります。それらは体の不自由な人へのサービスにもつながります。例えば、英語しかわからないから英語でガイドするのと、視覚障害の方に点字でガイドするのは、対応としては同じことでしょう。最初から、言語が増やせるようにしておけば、その仕組みはレガシーになります。

 東京オリンピック・パラリンピックをやることが決まって、良かったと思っています。というのも、日本人は農耕民族だから、細かな改善改良の積み重ねはいいけど、根本的に変えるというのは怖い、できれば現状を変えたくないと考えます。いつまでにやると決めないと、永久に変えられないのです。しかし、イノベーションをやらないと世界がライバルになったときに負けてしまう。何より、少子高齢化の進む日本では、社会をICT対応にして、効率化しないと今のサービスを維持するのは早晩不可能になります。そういう意味で、東京オリンピック・パラリンピックという明確な締め切りが設定され、いやがおうでも変化に立ち向かうことになったのはいいことだと思います。

 いったん締め切りが設定されると、いついつまでに何をやるという具体的な目標となり、その目標に向かってこつこつ努力するのは、逆に日本人は得意なんですね。ということで東京都には期待しています。

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