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IoTへの挑戦、成長軌道へ

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協力:KDDI

可能性広がるIoT時代 何回でもチャレンジできる

ユビキタス社会を提唱、東京大学教授の坂村健氏に聞く

 だから、クローズドはダメだというわけです。最近、IoTが世界的にも急速に注目された理由は、クローズドではなくオープンAPIの可能性に皆が期待しているからで、昔ながらのクローズド志向でIoTを考えたら失敗するでしょう。

 日本は、とにかくオープンに弱いのです。ある大手メーカーがビデオカメラの高いシェア持っていたのですけど、2年くらいで海外のベンチャー企業に追い抜かれてしまいました。なぜかというと、ベンチャー企業はオープンにつながるビデオカメラをどんどん出したからです。しかし、大手メーカーは最後まで、自社のクローズドにこだわったのです。それでは大手であっても、ダメになりますよね。

 では、なぜ昔はよかったのかというと、ネットでつながっていなかったからです。製品は単体での性能がすべてでした。そういう時代には日本は強かったのです。しかし世界がネットにつながる時代になったのに、クローズドにこだわっていては、企業の存続にもかかわります。

出遅れ感否めない日本のIoT、課題は完全オープン志向

――日本は出遅れたとはいえ、ここで気が付いたのだから、これから巻き返して、IoT活用による日本経済の発展を目指せばいいですよね。

坂村 確かに気が付いたのですけど、まだ完全にオープン志向にはなっていないのが問題です。オープンを目指すとなると、標準化や規格化に向けて、仲間でないライバルメーカーとも連携する仕組みを作らなければならないのですが、日本はそういうのが下手なんですよ。例えば、トヨタ自動車のカンバン方式は米ハーバード大学ビジネススクールの教科書にも載るほどの世界に誇るシステムですが、トヨタの系列、つまり仲間に限られます。

 そこで、ドイツでは、インダストリー4.0といって、中小企業も含めてドイツの産業界全体で、一種のカンバン方式を取り入れ、効率化のアップを目指すことを、国の産業政策として打ち出しました。米国もゼネラル・エレクトリック(GE)がインダストリアル・インターネット構想を提唱していますが、これもいろいろなメーカーを巻き込んだコンソーシアムで進めています。

 日本は、外国から入って来るものについては、世界標準だといってすぐなびくけど、オープンなエコシステム作りを自らリードしていくのはまだまだで、日本にとっての課題はここにあるといっていいでしょう。

――技術革新を目指しても、法規制がそれに追いついていかなというネックもありますね。

坂村 エアコンをインターネット経由で遠隔でオンしようとしたとき、1962年に作られた電気用品安全法がじゃまして、できませんでした。「危ないからダメ」といってね。この問題は、日本と外国の法律に対する考えの違いからきています。

 法律には大陸法と英米法という2つの考え方の違いがあって、大陸法はできる限り法律で決めるのが基本であるのに対して、英米法は法律で決めることは最小限にとどめています。大陸法を採用する日本は、ポジティブリスト方式で、法律に書いていないことはやってはいけない。だから、あらゆることを想定して法律を作らないといけないので、時間もかかるし手続きも複雑。家電がほかの機器とネットワークし制御される時代が来る認識はなかった時代に作られた法律ですから、当然「やっていいこと」の中に書かれていません。だからエアコンの遠隔オンはダメというわけです。対して、英米法を採用する米国などは、「やってみなけりゃわからない」ということ、実際やってみて不都合があれば、そこで裁判などで対応し、それを判例法としてためていくことで、その後に役立てるということです。

 ネット時代はスピードが大事なのに、日本は議論ばかりして、そこから抜け出せないでいます。米国がうらやましいのは、議論をしなくても、すぐに始められるということ。大陸法を採用する日本は、法律にがんじがらめになっていて、なかなかすぐに始められませんが、それでも国家戦略特区などで始める例が増えてきました。

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