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IoTへの挑戦、成長軌道へ

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協力:KDDI

可能性広がるIoT時代 何回でもチャレンジできる

ユビキタス社会を提唱、東京大学教授の坂村健氏に聞く

 INIADでは、学内でドローンを飛ばそうとか、自動運転車椅子を使う人のためのガイドをつけるとか、エネルギーの最適化にディープラーニングAI(人工知能)を投入しようとか、学生にもそれらを開放して、プログラミング実習をさせます。例えば、どういうプログラムを書けば、この電気がついたり消えたりするのかと教えると、いたずらしようとする学生は先生が講義している間に、いきなり電気を消して先生を驚かすなんてことをやるかもしれない。そこで、講義しているときは先生の制御しか受け付けないとか、いつ、どこで、誰が、どういう条件でその機械をコントロールできるかというアクセスコントロールでちゃんと管理できる仕組みが入っています。

30年前、すべてのモノにコンピューターが入る世界を目標に

――坂村氏は、30年前に「すべてがコンピューターにつながる」というユビキタス社会を提唱されました。まだ携帯電話がほとんど普及していなかった時代ですが、お考えはまさに、今話題のIoTと同じです。どういう経緯でこの研究に取り組まれることになったのでしょうか。

坂村 私が研究生活に入った頃は、ちょうど大型コンピューター全盛の時代で、コンピューターの未来図というと「第五世代コンピューター」のような、大型コンピューターが新技術で進化するような話が多かったのです。しかし、ちょうどマイクロコンピューターが出てきた時期でもあって、私はちょうど学会に行った米国でその興奮に直に触れることができたのです。ところが、日本に帰ってきたら皆大型コンピューター中心の人ばかり。それなら自分でやるぞ、マイクロンピューターが進化した世界を想定して、それに向かっていこう、と。

2015年、国連組織の国際電気通史連合(ITU)から、「21世紀の役立つ6人」の1人に選ばれた.授賞式にビル・ゲイツ氏は欠席(画像提供:東京大学坂村健教授) 2015年、国連組織の国際電気通史連合(ITU)から、「21世紀の役立つ6人」の1人に選ばれた.授賞式にビル・ゲイツ氏は欠席(画像提供:東京大学坂村健教授)

 大型コンピューターだと、どんどん大型化して世界のコンピューターは5台だけになって、それを皆、通信回線経由で使うという極端な未来図を語る人までいました。だから、こちらは逆に世界中のすべてのモノにコンピューターが入る世界をゴールにしようと思ったのです。で、プロジェクトを始めたのは1984年なのですが、1989年にシュプリンガーというドイツ──今は米国ですが──の出版社から、そういうゴールのイメージとその実現のための研究をまとめた英語の論文集を出していたことで、IoTの元祖と言っていただくことになったわけです。

 お陰様で一昨年には、国連組織の国際電気通信連合(ITU)から、「21世紀の役立つ6人」の1人に選んでいただきました。選定では、IoTの概念、あらゆるものがコンピューターにつながるということを、私が世界で最初に言ったことを評価してくれたようです。

――今この時代になって、それこそ火がついたように、日本の経済発展のためにIoTを活用しなければいけないと叫ばれています。ただ、課題もありますね。どんなものがあるでしょうか。

坂村 課題を検討するに当たり、「オープン」という言葉が重要なキーワードになります。ネットにものをつなぐということ自体は、昔からやっていました。今から20年ほど前に、ホームオートメーションというのがはやりました。家電メーカーが、「外出先から家の電気がついているかどうかを確認したり、暑いときはエアコンのスイッチを外から入れたりできますよ」などと言い始めたのです。で、どんな製品を出してきたかというと、クローズドな、囲い込むようなものばかり。例えば、A社の製品はA社のホームサーバーでしか管理できない。B社もそう。1社の家電で家中統一するという人は珍しいので、「そんなものいらない」「高いし」ということになって、うまくいきませんでした。クローズドな戦略が災いしたのです。

 昔のような特殊な家庭用のLANじゃなくて、今はインターネットになりましたが、それでもそれぞれの機器メーカーが作ったアプリじゃないと使えないといったことがあります。

 では、オープンとはどういうことかというと、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、扇風機などのメーカーはそれぞれ違っても、ネットにつなげれば、APIがオープンになっているので、色々な人が色々なアプリを作ることが可能で、それぞれを連携させコントロールできるということです。その際、アプリはどこかのメーカーが作ってもいいし、小さいベンチャー企業が作ってもいいし、自分でプログラムを書いてもよい。こうしてオープンにすることで、例えば、天井にセンサーをつけて、暖かくなったら扇風機を回して拡散する、というような、異なるメーカーの製品の連携もできます。クローズドだと、そういうこともできません。

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