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IoTへの挑戦、成長軌道へ

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協力:KDDI

可能性広がるIoT時代 何回でもチャレンジできる

ユビキタス社会を提唱、東京大学教授の坂村健氏に聞く

――今年の4月から東洋大学が新設する情報連携学部INIAD(Information Networking for Innovation and Desing)の学部長に転じられますね。「文芸理融合」をコンセプトに掲げて、まさにIoTを研究していく新たに作られる大学、研究所だとお聞きしました。

2017年4月に東洋大学が新設する情報連携学部(INIAD)の学部長に就任する(画像提供:東京大学坂村健教授)

2017年4月に東洋大学が新設する情報連携学部(INIAD)の学部長に就任する(画像提供:東京大学坂村健教授)

INIADの設計も隈研吾氏が手掛けた(画像提供:東京大学坂村健教授) INIADの設計も隈研吾氏が手掛けた(画像提供:東京大学坂村健教授)

坂村 そうなんです。それで、ダイワユビキタス学術研究館のコンセプトを拡大しようということになりました。東大は大学院ですが、東洋大は学部ですから1学年400人もいる。スタッフも入れて2000人規模のビルなんで、床面積も7倍、ついてるIoTデバイスが5000くらいになります。

 INIADでは照明・空調・エレベーター、ドアだけではなく個人用ロッカーも制御しますし、全部の部屋や廊下に温度、湿度、気圧、照度、人感などの統合センサーを設置し、使用電力計測も細かく行っています。それから「位置認識電波マーカー」、これはフレキシブルBLEマーカーといって、太陽電池で動く低消費電力BlueTooth規格の電波で、位置のコードを発信し続けるビーコンなんですね。BlueToothはスマホで受信できるので、スマホを持っていると自分がどこにいるかわかります。位置コードはTRON規格のucodeを使っています。フレキシブルというのは、太陽電池を含めて全体が曲がるようにできているということで、軟らかいので頭に落ちたとしても危なくありません。照明器具の脇に両面テープを貼るだけで使えるので、電池交換もいらないし設置コストが非常に安くなります。

IoTエンジン IoTエンジン

 私の進めるTRONプロジェクトでは機械の中に入るコンピューターのオペレーティング・システムの研究をずっと昔からやっているのですが、IoTエンジンという最新のTRON OSの入っているコンピューターは、ワンチップで全部の機能が入っています。しかも、IPv6というインターネットの規格の低消費電力無線向けサブゼットの6LoWPANも標準で持っていて、無線によって、直接ここからインターネットのクラウドにつながります。

東大の研究室を進化させるINIADで、IoTの実験を加速する

 INIADでは、これをすべてのIoTデバイスに採用していて、すでに大量生産仕様です。これで入退室管理のカードリーダーなどのモジュールも独自に作ったりしています。6LoWPANという、さきほど説明したIPv6に直結できる小さな無線モジュールが全部に入っているので、設置も簡単です。INIADの新校舎は、そういう最新の設備でできているビルなのです。

 当たり前ですが、照明のモジュールに全部入れるとなると、安くないと大変なことになります。1個数千円で買えたものが、電球1個10万円にもなれば、誰も使いません。だから、TRONでは、小さくて安くできるよう工夫しています。

 INIADでは、構内の状況が全部わかります。そうすると場所を認識して経路誘導するとか、災害時の学校での出欠確認、入退出管理、AR表示、設備制限を可能にしたり、部屋に入ると照明・空調が起動して、環境に合わせて最適化するとか、経路案内にあわせてエレベーターが自動できて、指定階で止まるなど、エレベーターのボタンを押す必要すらありません。私がここでは最高プライオリティーを持っているので、私がエレベーターを呼ぶと、ほかの人のいうことを一切きかないとか(笑)。そういうプログラムを書けば、そうなります。

 ビルの外の情報もオープンデータという形で入ってくるんです。天気予報とか周辺の交通情報とか。そのほか、このビルの構造データもデータベースに全部入っていてオープンAPIで利用できます。そういうものを駆使して、自動で照明や空調を最適制御するわけです。

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