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この時代を乗り切るワークスタイル改革

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働き方の常識変える、リクルートの奇策

リクルートホールディングス 働き方改革推進室 室長 林 宏昌氏

 もちろん、お客様の個人情報や重要な決済を扱うシステムは(リモートワークの)ネットワークから分断し、限定されたユーザーが特定の端末からしかアクセスできない環境を構築しました。こうした部分は細心の注意を払い、万全を期しています。

――リモートワークを体験した社員からは、どのような声が上がってきましたか。

 こだわったのは、なるべく多くの従業員がリモートワークを体験することです。リモートワークにリスクや不安を訴える人にも、「体験して、実際に乗り越えられなかったことを教えてほしい」とお願いしました。働き方改革は、組織全体で取り組むものです。ですから、推進派/反対派の両方から課題を挙げてもらい、真摯に耳を傾けました。そして、その改善ポイントや取り組みの経過も、社内メルマガでありのままに紹介しました。

 実際、多くの人が体験することで、私も想定していない課題が浮き彫りになりました。

 例えば、一部の若手社員からは、「普段の生活ではスマホやタブレット端末で事足りているから、自宅にインターネット環境がない。自宅ではパソコンを使って仕事をできる状況にない」という声が上がりました。実際のところ、スマホのテザリング機能を利用すれば、パソコンでインターネットを利用できます。しかし、テザリング機能を使ってテレビ会議をしたり容量の大きいファイルをやり取りしたりするのは、通信速度やコストの観点から必ずしもうまくいきません。

 一方、オフィス側からは、「周囲に気兼ねなく話ができる、テレビ会議用のスペースを作ってほしい」といった要望が上がりました。

 こうした要望は、解決に至るまでの「時間とコストの濃淡」はありますが、すべて乗り越えられるものです。例えば、ネットワークやパソコン環境に課題があるなら、ポケットWi-Fiや大型ディスプレーを貸与すればよい。会社でも自宅でもないところで作業したい社員に対しては、「社外サテライトオフィス」を会社として用意し、利用してもらえればよいのです。すでにリクルートでは外回りの多い社員のために、首都圏37カ所でサテライトオフィスの契約を結んでいます。ここをリモートワークオフィスにすれば、家族にも気兼ねなく仕事ができます。

チャットでもっと「たわいない雑談」をできたら...

――リモートワークが進むと、社員同士のコミュニケーションが減ることを懸念する声も出たのではないでしょうか。

 実は、リモートワークに懐疑的な人が一番気にしていたのは、コミュニケーション量の減少でした。

 リクルートには「ちょっといいですか」という雑談コミュニケーションが浸透しています。これは、普段の何気ない会話から新しいアイデアを見つけ、まずはやってみるという企業文化です。こうしたフットワークの軽さとスピード感が、私たちの強みでもあります。リモートワーク懐疑派は、物理的に離れていると「ちょっといいですか」ができなくなると懸念したんですね。

 リモートワークのフィージビリティースタディー終了後に行ったアンケートの結果を見ると、コミュニケーションの取り方は今後の課題であることがわかりました。アンケートに回答した58%の従業員が「業務外コミュニケーションが減少した」と回答していたのです。「リモートワークで生産性が向上した」と回答した従業員が54%に上ったことを考えると、「仕事に集中できたけど会話が少なくなった」と感じた従業員が半数以上いたことになります。

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