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しがらみ経営

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「しがらみ」を断つべきか、生かすべきか

ポラリス・キャピタル・グループ 木村雄治氏、多摩大学大学院 徳岡晃一郎氏

 物事には、作用と反作用がある。どんな施策も、いいことづくめというわけにはいかない。効果が出る一方で、必ず副作用も出る。しがらみが問題だからといって、単純にしがらみを元から消し去ってしまったら、角を矯めて牛を殺すことになりはしないか。

 これは、結局のところ、メリットとデメリットの利益考量という問題である。あるルールによって10のメリットがあり、一方でデメリットが3だとした場合、圧倒的にメリットが大きいのだからそれを改める必要はあるまい。

 では、この比較考量をどのような観点で行えばよいのか。

しがらみをうまく生かす視点①―取引コストとのバランス

 その一つめが、トランザクションコストとのバランスである。

 例えば、部品供給メーカーを選定する場合、長年の取引慣行や個別交渉を通じて既存の供給メーカーとの間で与信管理や取引条件などが最適化された状態であれば、部品単価が多少低い新規メーカーをいちいちコストをかけて審査し、取引全体の見直しをする必要はない。

 しかし、既存取引先との長期取引が系列化を促し、そこに人材の供給が絡んでくるとどうだろう。そうした間接費を含むこちらのコストがかえってかさむ場合もあり、しかも、部品メーカー側への出向者とのしがらみが紛れ込んで、さらに目に見えないコストとなるリスクがある。そうなれば、新たなトランザクションコストが発生しても、新規取引先に切り換えたほうが得かもしれない。また、トランザクションコストの多寡にかかわらず、相手方の経営破綻による不良債権化リスクが生じた場合は、リスクマネジメントとして取引は解消したほうがよい。

 日産自動車では、カルロス・ゴーンCEOのもとで日産リバイバルプランを実行し、系列の解体に踏み切った。一般に、系列による長期的かつ大量取引は、有利な条件での取引を可能とするが、日産の場合はそうではなかったわけだ。こうした是々非々の判断で、過去の関係性に拘泥せず、利益の比較考量を行うことで、しがらみかレガシーかを決めることができる。

しがらみをうまく生かす視点②―安定性と信頼性のバランス

 二つめは、安定性と信頼性のバランスである。

 安定性vs信頼性という構図は、一橋大学の山岸俊男教授が提唱するものであるが、閉鎖的な集団に留まることは安心や安定をもたらす一方で、今日のグローバル社会においてダイバーシティが進むと、閉鎖的な特殊空間を作って安定を求めるよりも、よりオープン化を進めて積極的に他者との新たな信頼関係を構築していくほうが、より多くの利益を得られる可能性が高いという考え方だ。

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