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しがらみ経営

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「しがらみ」という生活習慣病の末路

ポラリス・キャピタル・グループ 木村雄治氏、多摩大学大学院 徳岡晃一郎氏

 なぜ、しがらみは生まれるのか。

 しがらみが生まれるおおもとの原因は、人間が弱い存在だからだ。多少のルール違反やごまかし、人間関係の上下を利用したごり押しなど、安易な方法があれば、困難に立ち向かうより、楽な道を選びがちである。

 一つひとつは小さな問題で、目くじらを立てるほどのことではない。だからこそかえって、それらが少しずつ積み重なっていき、事態を悪化させてしまう。そして、しがらみが常態化すると、後戻りできなくなってしまうのだ。

 その意味において、しがらみは生活習慣病に似ている。

 糖質の摂りすぎや、塩分の摂りすぎが体によくないことは誰でも知っている。控えなくてはならないと誰もが思う。しかし、体にはよくはないが、美味である。少しくらいいいだろうとの甘えが生まれる。そして、徐々に体を蝕んでいくことになる。ついには、一定の許容量を超え、高血圧、糖尿病、痛風といった生活習慣病に陥り、手遅れになってしまう。

 しがらみについても、初期の段階で小さい悪癖を許容することが、将来的には手遅れの事態を招くことになってしまう。これを防ぎ、健康的な組織を維持するためにも、しがらみに対するアンテナを立て、小さいうちに芽を摘み取っていかなければならない。

しがらみ化のプロセス①―「形骸化」から「意味のない徹底」へ

 どんなにすぐれた制度であっても、時間の経過とともに、その運用実態に変化が起きる。制度そのものが形骸化してしまったり、既得権や影響力行使のために、本来の趣旨とは違った運用がなされたり、あるいは、時代とともに変化し続けている環境にそぐわなくなることは確実に起きる。

 たいていの場合、会社に害をなす問題をはらむようになって、「しがらみ化」してしまう。このしがらみ化がどう進んでいくのか、身近な例として、営業所や部署で行う朝会をもとに、しがらみ化のプロセスを見ていくことにしよう。

 朝会は、始業前に、元気・やる気を引き出すことによって、一日のいいスタートが切れるようにする、組織活性化の有効なツールだ。伝達事項の徹底、情報共有の場としても活用できる。かつての日本では、ほとんどの会社で朝会が行われていた。今でも、工場や建設現場などの一斉勤務の職場では、朝礼や体操、服装検査などが行われている。フレックスタイムや裁量労働制の導入に伴い、ホワイトカラーの職場では朝会が廃止されたところが多いが、これによって職場の活気・一体感がなくなったと嘆く経営者、管理職も少なくない。

 本来、職場のメンバーが「一日のいいスタートを切る」ことが目的である朝会だが、同じことの繰り返しのためにマンネリ化してしまうことも多い。立ったまま毎日同じ話を聞いているうちに、欠伸をする者が出てくる。「元気を引き出す」という本来の目的が達成されるどころか、逆効果になってくる。

 これが、しがらみ化の第1フェーズ、「形骸化」である。

しがらみ化のプロセス

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