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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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「異床同夢」で日本の技術はもっと強くなる

第1回 アスタミューゼの永井歩社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

 不確実性の時代と言われて久しい。社会が複雑化し、めまぐるしく変化するなか、従来の課題発見・解決型アプローチは限界に近づいている。変化に対応するのでなく、変化を先導する。自らの生み出したい世界を構想し、それを形にしていくアプローチが必要だ。幸い、日本の企業や研究組織が現場で培ってきた個々の能力・技能には大きな広がりと深みがある。それらを生かした日本型のイノベーション=「和ノベーション」を実現していくには何が必要か。欧州系戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーの長島聡社長が、圧倒的な熱量を持って未来に挑む担い手たちを紹介していく。

世界中の技術情報を集め、企業を支援

長島 聡氏(ながしま さとし)<br>

ローランド・ベルガー代表取締役社長、工学博士。<br>

早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目して、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。自動車産業、インダストリー4.0/IoTをテーマとした講演・寄稿多数。近著に「日本型インダストリー4.0」(日本経済新聞出版社)。 長島 聡氏(ながしま さとし)
ローランド・ベルガー代表取締役社長、工学博士。
早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目して、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。自動車産業、インダストリー4.0/IoTをテーマとした講演・寄稿多数。近著に「日本型インダストリー4.0」(日本経済新聞出版社)。

長島 連載1回目にご登場いただくのは、世界中の技術や特許、投資情報などを集め、その分析結果をもとに企業のイノベーション創出を支援している。アスタミューゼ(東京・中央)の永井歩社長です。事業戦略に役立つ情報を徹底的に集めて提供する非常にユニークなコンセプトですが、具体的にどんな事業を手掛けているのですか。

永井 大きく分けて3つの事業があります。1つ目は企業のオープン・イノベーションやクローズド・イノベーションの支援です。オープンの方は他社との共同研究や提携、M&A(合併・買収)、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル、※1)支援など。クローズドは自社技術を使った新規事業の提案や新規事業のための研究開発投資、知財戦略構築などの支援です。

(※1)投資会社でなく、事業会社が自己資金を使ってベンチャー企業などに投資すること、あるいはその組織。一般のベンチャーキャピタルが投資収益だけを目的とするのに対し、投資収益と併せて自社の事業とのシナジー効果を狙うことが多い。

 2つ目はこうした事業を担う人材の流動性を高めるための人材紹介や人材広告事業です。いま注目されているAI(人工知能)や自動運転、リチウムイオン電池、炭素材料など350以上の成長分野を対象に人材情報を保有しています。

 3つ目は世界中から集めた技術や特許などの情報をウェブ上で公開し、未来創造・イノベーションを個人単位で支援したり、他社にAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース、※2)でデータ提供したりするプラットフォーム事業で、現在プラットフォーム上では月間約100万人くらいの方々が日々サイトを閲覧しています。

(※2)ソフトウエアの機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のこと。

長島 簡単に言うと、企業が新規事業を立ち上げたいとき、どこに、どんな技術があって、どんな人材がいて、誰と組むと面白いことができそうだね、ということがパッとわかるということですね(笑)。これまでは世界中を俯瞰(ふかん)するこうしたデータベースはなくて、専門家に聞く以外になかった。アスタミューゼは非常に客観的な情報を活用することで、事業性をより精緻に判断できるわけですね。そもそも、こうした情報を集めようとしたきっかけは何だったんでしょう。

永井 私はもともと大学では機械工学、大学院では原子力工学を専攻しました。ただ、ソフトウエアに興味があって学生の頃からソフト会社で働いていたんです。そこで気付いたのが、ソフト産業は技術情報がオープンなのに対し、その他の産業は非常にクローズドだということでした。具体的には、ソフトの世界では「Git Hub(ギットハブ)、※3」という情報共有のためのインフラサイトがあり、技術者が開発したソースコードを登録する仕組みがあります。自分の技能を公開することで活用する機会を得られ、やりがいも感じられるわけです。

(※3)ソフト開発のための管理ツールを提供するウェブサービス。共同で開発作業をする際のバージョン管理などを効率的にできる。

 ところが、その他の産業は大学内や業界内といった狭い世界でしか情報共有されておらず、もったいないなあと思ったんですね。たとえば原子力産業には極めて優秀な研究者がたくさんいて、最先端の研究をしていました。ところが、その産業で使うことしか考えていないんです。あらゆる産業で使える技術が山のようにあるのに、非常にもったいない。そこで勝手ながら、自分でさまざまな産業の技術情報をかき集めて公開しようと考えたわけです(笑)。

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