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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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「異床同夢」で日本の技術はもっと強くなる

第1回 アスタミューゼの永井歩社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 情報ニーズは高まっているわけですね。でも、「まだないけど意義がある情報」って簡単に集められるんでしょうか。

永井 非常に人手がかかっています。まだ世の中にフォーマットすら存在しないような新しいアイデアとか技術などの情報は、かなりアナログの形も含めて集めていますが、ノイズも多く、最終的には自社にいるテクノロジー評価チームで、きちんと確認してから提供しています。

お金の流れから客観的に評価

長島 それは安心ですね。経営者にとっては、すでにあるものと、意思・ニーズのところが両方わかるから、そのギャップとか、どこに真っさらな市場、いわゆるホワイトスペースがあるかを俯瞰(ふかん)しながら意思決定できるということですね。

永井 はい。もともと日本企業では、技術をどう活用するかは経営者が考えなくても現場から勝手に生まれてくることが多かったのです。ところが、技術が複雑化して現場は研究だけで手いっぱいになり、顧客との接点が減っています。だからこそ、技術の使い道だけを専門に考えるような部門を明示的に作らないと、技術で勝ってビジネスで負ける状況が続くのではないかと危惧しています。

長島 非常に重要な指摘ですね。ところで、こうした情報を欲しがっている人たちに対して、どんな風に届けるか、見せるか、について工夫していることはありますか。

永井 はい。実は私たちは情報を集めること以上に、どう見せるかにこだわっています。工夫している点としては3つあります。1つは企業や技術、研究といった情報を単体で見せるのでなく、できるだけ活用するストーリーが想像できるように示すことです。情報を知ること、調査することが目的ではなく、最終的に事業にしたり、顧客に価値を提供したりできるかが重要ですので。

 2つ目は、私たちは様々な無形資産情報に対して技術や事業の観点から本質的な評価をしますが、それに加えて、その対象への過去から現在までの投資など、お金の流れをセットで伝えています。資本主義の世界である以上、投資されている、資金調達ができていることは重要な価値であり、客観的で社会的な評価指標となります。例えば、技術は凡庸にみえても、クラウドファンディングで多くのお金を集めていれば、何かしら社会の中で評価すべき材料を持っていると判断するわけです。

長島 なるほど、それは面白い考え方ですね。3つ目は何ですか。

永井 3つ目はオープンイノベーションの戦略とクローズドイノベーションの戦略を同時に伝えることです。例えば、外部の技術だけを伝えると、「自分たちはダメだ、遅れている」もしくは「それは社内で作れるのでは?」と感じてしまいがちになります。私たちは顧客の技術や資源で競争優位性がある部分も合わせて指摘することで自社の技術に自信を持ってもらい、知の交流に対して抵抗感をなくしていくように促しています。

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