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紙のまち、大学誘致で地場産業を活性化~愛媛県四国中央市~

日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 深沼 光氏

 全国には長い歴史を持つ地場産業が存在するまちが数多くあります。ただ、既存の方法で既存の製品をつくるだけでは、競争力を維持できません。技術の進歩や消費者ニーズの変化に対応し、地場産業も新たな製品を開発していく必要があります。また、それらを担っていく人材も必要です。そこで注目されるのが大学との連携ですが、地方都市では地元に相手となる大学がないことも多いのが実情です。本稿では、企業、団体、行政などが一体となって、地場産業に関連した大学院と学科の誘致に成功し、現在でも密接な連携を図っている愛媛県四国中央市のケースを紹介します。

<愛媛県四国中央市の概要>

大学院にくわえ研究機関も

製紙工場が多い四国中央市 製紙工場が多い四国中央市

 愛媛県の東端にある四国中央市は、日本一の紙のまちです。新聞雑誌用紙、トイレットペーパーといった生活用紙、紙フィルターや抗菌包装用紙、さらには紙おむつや生理用品など、様々な製品が作られます。書道用紙、ふすま紙といった伝統的な製品を製造する中小企業もあります。製紙と紙関連の事業所は合計で300件以上、出荷額は約5000億円に達しますが、2010年当時は出荷額が減少傾向にありました。

 そうした状況の中、四国中央市に愛媛大学大学院の農学研究科紙産業特別コース(現・生物環境学専攻バイオマス資源学コース)が開設されました。製紙技術や製紙材料論など技術面だけではなく、紙産業マネジメント論や戦略的マーケティング論など経営面の講座も取り入れているのが特長です。

 この大学院の開設をきっかけに、愛媛大学と地元企業とのさまざまな連携が、それまで以上に図られるようになりました。大学や短大のなかった同市にとっては、念願の高等教育機関でもあります。2014年には愛媛大学紙産業イノベーションセンターが設置され、さらに研究機能と地域連携が強化されました。このように大学が四国中央市にやってきたのは、大学自身の地域連携戦略にくわえ、地元の強い熱意によるものでした。

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