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職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち

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守りの経営はあっても「守りの不正」はない

前田 康二郎氏

 「2、3万くらいちょろまかしたっていいだろう、3億円の利益がどうにかなるのかよ」と吐き捨てる社員がいたら、若い頃の私であれば正義感に燃えていて「それでも不正はとにかくダメです」と言っていたと思います。

外に隠す限り「逃げ」である

 今は、「まあ確かに何億円も利益があったらそう思いますよね」と思う部分もあります。けれど年を重ねた分、「もっと深く考えると、結局不正というのは『逃げの姿勢』になるので、会社経営という観点からはやはりすべきではないと思うのですが、どう思いますか」と聞き返すと思います。

 会社の経営方針では、一般的に通常時には「攻めの経営」が求められ、時によっては「守りの経営」も求められます。しかし、「逃げの経営」という言葉は聞いたことがありません。不正についてはどうでしょうか。「攻めの不正」という言葉はないでしょう。あるとしたら「守りの不正」か「逃げの不正」です。そして、多くの不正をする人が、自分の不正は会社を守るため、従業員を守るため、取引先を守るためと、「守りの不正」だと主張します。

 ならば、胸を張って堂々と「これから不正をします」と宣言すればいいではないですか、という話なのです。確かに社内では堂々と不正をしているのかもしれませんが、社外に出たらこそこそと不正を隠しているのではないでしょうか。決算発表の場で「会社を守るために不正処理をしまして、売上高には翌年度の売上も取り込んで850億円、営業利益が......」と、経営者が会見するというのでしょうか。そこまでやるなら、本気で「守りの不正」をしたかったのだなと思います。

 公の場で言えないことをした。それは、どんなに自分たちが「守り」だと言い張っても「逃げの不正」です。「隠す」という時点で、アウトなのです。

悪貨が良貨を駆逐する

 会社の不正というのは、金額の問題だけではありません。不正をする社員の数の問題でもあります。

 1人がやれば2人、2人がやれば5人と、放置すればするほど必ず連座して増えていきます。不正をする人数が増えると、それに伴い、不正をする人間を「守る」人間も増えていきます。その結果、不正を認知しながら隠蔽している社員数のほうが多くなるので、もはや社内の人だけでは、組織を元に戻すのはほぼ不可能です。そこに残された正義感のある人はその他の社員につぶされ、追い出されてしまいます。「悪貨が良貨を駆逐する」というのは、まさにこのことです。

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