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肖敏捷の忠言逆耳

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為替操縦国指定より「人民元神話」の崩壊が要警戒

SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト 肖 敏捷(しょう びんしょう) 氏

 トランプ米大統領は昨年当選後、中国を為替操縦国に指定すると公約したが、今年1月20日に正式に就任した後は、現時点に至っても、中国の人民元問題について沈黙を続けている。

 環太平洋経済連携協定(TPP)からの永久離脱、米国とメキシコとの国境地帯における壁の建設、移民の入国制限など、大統領令に次々と署名するその「有言実行」から、為替操縦国の認定及び懲罰的な輸入関税の徴収など、トランプ大統領の矛先が中国に向き始めるのは時間の問題だろう。

音を立てて崩れようとしている「人民元神話」

 1992年から1994年まで、中国が為替操縦国に指定され続けてきたが、これは中国が人民元対米ドルレートを切り下げてきたのが原因だったとみられる。これに対して2015年8月以降の元安基調については、中国当局が容認するどころか、外貨準備高を動員したり、資本規制を強化したりするなど、さらなる元安の阻止に躍起となっているくらいで、これを為替操縦国と言われてはたまらない。

 為替介入しているのが為替操縦の証拠だと言われたらその通りだが、元安ではなく、元高のための為替介入なら、恐らくトランプ氏も苦笑いするしかないだろう。だとすると、これから始まる熾烈(しれつ)な米中通商交渉の突破口として、為替操縦国の認定という切り札を温存し、市場開放を迫るなど、トランプ氏は対中政策を練り直す必要があるかもしれない。

 一方、中国政府を悩ませているのは、中国国内の個人や企業の間では人民元の先安観が急速に広がり、資本流出が止まらないことだろう。2005年7月から2015年7月まで、人民元対米ドルレートがほぼ一本調子で上昇し、「人民元神話」が定着してきたが、この神話が音を立てて崩れようとしている。

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