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職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち

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社長の「しょうがない」が不正を誘発する

前田 康二郎氏

 私の好きではない口癖に、「しょうがない」「仕方がない」があります。

 もちろん、仕事でミスをして落ち込んでいる人などに「しょうがないよ」と周囲が声をかけるのならば、それはよい使い方だと思います。しかし、自分がやったことに対して「しょうがない」と言ったり、都合の悪いことが起こった時にその責任をはぐらかすために自ら「仕方がない」と言ったりする使い方はよいとは思えません。

「特別」が生み出すモラルの決壊

 たとえば、出荷基準で売上をあげている会社があるとします。予定通りであれば、年度末の最終日の出荷で、その年度の予算が達成されるはずでした。ところが担当者と工場の連携ミスでその日の出荷が間に合わず、新年度である翌日出荷になってしまいました。営業担当者をはじめ、社長や役員も、予算を達成させるために、何か月も前からスケジュールを組んでやってきたものです。そうすると社長としては、親心にも似た心境で「なんとかならないか」という気持ちが芽生えてきます。

 通常であれば、「ミスはミスだからしょうがない。新年度の売上にしよう。こういうことが起こるから日頃のオペレーションが大事だと厳しく言っているのだ」と社員を指導し、同じことが2度と起こらないように改善策を講じることでしょう。

 しかし、社長が予算達成を諦めきれないとき、「普段は出荷基準で売上を計上しているけど、こういう時はしょうがない。今回だけ特別に売上を立ててしまおう。別に売上をごまかしたり、お金をどうにかしようとしたりしているわけではないのだから」と自分に言い聞かせて、経理に今期の売上として計上するよう指示をしてしまう可能性もゼロではありません。

 社長も人間ですから、迷うのです。心情的にはわからなくもないのですが、やはりそれはしてはいけないのです。一度「特別」を作ってしまうと、モラルの堤防が決壊します。必ず、「売上のほかにあの費用処理も翌年度にまわして今期は黒字にしよう」「昨年もやって問題なかったから今年もやってしまおう」となるのです。

「しょうがない」が不正を誘発する

 会計上の数字を操作することもいけませんが、それよりももっと悪影響を与えるのが、「しょうがない」と思える事情やアクシデントがあったら多少の不正はしていいんだ、と社員が認識してしまうことです。

 「経理部長は、いつも自分たちにはルールを守れと厳しく言っているけど、社長からの不正の指示には従うんだ」と、まず部下の社員たちが思います。そして、各々が自分なりの「しょうがない」理由を作って、データを偽装したり、商品を横流ししたり、ミスを隠ぺいしたり、小さな不正を行うようになっていくのです。それを誰かがやめるように指摘しても、「だって社長もやっているじゃないですか」と言われたら、言い返す言葉がありません。さらに、どこまでが「しょうがなく」て、どこからが「しょうがなくない」かということも、誰も答えられないでしょう。

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