日本経済新聞 関連サイト

職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち

記事一覧

なぜ「普通の人」に不正をされてしまうのか

前田 康二郎氏

「自分は騙されたことがない」という人ほど騙されやすい

 「自分は騙されたことが1度もない」という人がいます。そういう人ほど騙すのは簡単です。なぜならその人は、「1度も騙されたことがない」のではなく、「自分が騙されたということに1度も気付いたことがない」からです。

 よく考えてみてください。私達は普段からどれだけ嘘をつくでしょうか。

 「何か悩み事があるんじゃない?」「いいえ、全然」
 「給料が安いと思っているでしょう」「いいえ、全然」
 「私のこと、正直苦手でしょう」「いいえ、全然」

 相手への気遣いの嘘であっても、嘘は嘘です。自分はそれだけ相手に気付かれないように嘘をついているというのに、相手の嘘は100パーセント見抜いているなどというのは、傲慢ではないでしょうか。そのような人ほど、「あなたは騙されているよ」と言っても聞く耳を持ちません。「私が騙されるはずがない。騙されたことがないのだから」と言って、泥沼にはまっていきます。

 逆に、「自分もこれだけ嘘をついてしまうのだから、反対に、知らず知らずのうちに相手から嘘をつかれていることも実際多いのだろうなあ」というくらいのスタンスでいるほうが、騙されにくいはずです。

経理担当者も同じように騙されやすい

 自分が騙されるかもしれないと思う人と、そうでない人は、身構え方が違います。

 自分が騙されるかもしれないと思う人は、騙す側の人間の目線に立ち、自分は騙されないと思う人は、自分の主観だけで物を見ているのです。

 私は長らく経理を担当していましたが、さすがに普通の人が経理担当者を騙すのは簡単ではありません。だから、もし騙すなら、経理社員が不得手なところを狙ってくるだろうと想像します。そうすると一番手っ取り早いのは外注先と結託して支払請求書の「内容」、たとえば単価を少しいじって水増し請求する、ということなどがあるでしょう。内容に関しての専門知識がなければ、踏み込みにくいですし、もし経理から尋ねられても、材料価格が高騰して、などと言えば逃げ切れる可能性もあります。

 「自分は騙されるかもしれない」と思っている経理は、このような場合の対策も講じて内容についても勉強していますが、「自分は騙されない」と思っている経理社員であれば、このような発想自体がないですから、水増し請求にも気付かず、その「偽」の請求書をもとに入力した、「偽」の会計データの金額が請求書の金額と一致しているか何回も確認していることでしょう。そして騙されたまま会社のお金が多く出ていくことになります。本来は「この請求書が本物かどうか」というチェックのフローが、まずプロの経理としてはほしいところです。

PICKUP[PR]