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みずほ銀行「反社向け融資問題」に見る不祥事拡大のメカニズム

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 前回、「不祥事拡大の鍵を握る『問題の単純化』」では、不祥事の重大化には「問題の単純化」が大きくかかわっていることについて詳述した。このような単純化の過程で、企業不祥事は、その実態とは全く異なるもののように誤解されてしまうことになる。一度、「問題の単純化」による誤った認識が先行すると、後からその誤解を解消することは容易ではない。不祥事が表面化した直後の対応によって誤解が防止できるか否かは、その後の展開に大きな影響を及ぼす。

 そこで、危機対応の失敗がどのような過程を経て巨大不祥事へと発展するのか、過去の事例を基に考えてみよう。今回は、2013年に表面化したみずほ銀行「反社会的勢力(以下:反社)向け融資」問題を取り上げる。

 問題の発端は2013年9月27日、金融庁がみずほ銀行に対し、銀行法に基づく業務改善命令を出したことだった。

 内容は、みずほ銀行が、信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)などを通じて融資をしていた提携自動車ローンに関して、

(1)多数の反社との取引が存在することを把握してから2年以上も反社との取引の防止・解消のための抜本的な対応を行っていなかったこと
(2)反社との取引が多数存在するという情報も担当役員止まりとなっていること


 など、経営管理態勢、内部管理態勢、法令等遵守態勢に重大な問題点が認められた点を指摘し、改善を求めるものだった。

 金融機関に対して業務改善命令が出されるというのは珍しいことではなく、通常は、それ程大きく報道されることもない。しかし、この時のみずほ銀行に対する命令に対しては、マスコミや社会の反応が大きく異なっていた。金融機関の重大な不祥事として大きく報道され、社会の注目を集めることになった。

 そこでの「問題の単純化」には、2つの要因があった。1つは、業務改善命令が出された時期が、メガバンク幹部の腐敗と金融庁との確執をテーマにした人気テレビドラマ「半沢直樹」(TBS系)が、最終回で驚異的な高視聴率を記録して放映終了した直後だったことだ。登場人物がドラマと同じ「メガバンクと金融庁」であったことがドラマと同じイメージでとらえられることにつながった。

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