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介護人材の確保は「サービスの質向上」から

日本政策金融公庫総合研究所 研究員 山田 貴之氏

 人口の高齢化により、介護保険サービスの需要は増大しています。要介護または要支援と認定された人数は、2014年は606万人になり、介護保険制度が創設された2000年に比べて約2.4倍になりました。需要の増加によって介護保険サービスを提供する事業所数も増えており、その多くが中小事業者となっています。一方で、介護業界においては人材不足が深刻です。本稿では、介護業界における人材不足の状況を示しながら、事業所数の多い訪問・通所介護における人材確保に必要な取り組みについて考えます。

2025年には38万人が不足

 介護保険サービスを提供する事業所のなかでも、訪問介護と通所介護を行う事業所数の増加は顕著です。厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」によれば、訪問介護の事業所数は2000年には9833でしたが、2015年には3万4823と、約3.5倍に増加しています。また、通所介護の事業所数は8037から4万3406と約5.4倍になっています。

 事業所の増加に伴って、介護に直接携わる職員の数も増えています。厚生労働省の「介護人材の確保について」によれば、2000年には54.9万人でしたが、2013年には170.8万人と3.1倍になっています。ですが、それでも介護職員は足りていません。

 例えば、2016年9月の「介護サービスの職業」における有効求人倍率は3.18で、全職業の1.40に比べて高水準になっています。こうした状況は、今後も続くと見込まれています。厚生労働省は、2015年6月に発表した「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)」のなかで、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には253万人の介護人材の需要が見込まれるのに対して、供給は215万人にとどまり、約38万人が不足すると推計しています。

定着率の向上が人材確保の鍵

 人材不足を解消する方法としてまず考えられるのが入職者を増やす取り組みです。厚生労働省は介護の仕事の魅力を広めたり、介護職員の処遇改善に取り組んだりしています。また、採用活動に力を入れる介護事業所も少なくありません。

 こうした取り組みは大切ですが、人材不足は介護以外の業種においても同様なので、介護業界の入職者だけを増やすのは容易ではありません。また、せっかく入職してもすぐに辞めてしまえば、人材不足の問題はいつまでたっても解決しません。採用コストがかさむだけではなく、介護に必要なノウハウや技術も事業所に蓄積されないでしょう。そこで人材の定着率を高めて離職者を減らすことがより重要になります。

 このことは、日本政策金融公庫総合研究所が2015年に実施した「訪問・通所介護事業に関するアンケート」(以下、「アンケート」といいます)の結果からも読み取れます。介護職員・登録ヘルパーの人数が足りているかどうかをみると、58.5%の企業が「足りていない」と回答しており、「足りている」の41.5%を上回っています。定着率と介護職員・登録ヘルパーの充足状況の関係をみると、介護職員が「足りている」と回答した企業の割合は、定着率が「高い」と回答した企業では51.5%であるのに対し、「低い」とする企業では16.5%しかありませんでした(図1)。

図1 定着率と介護職員・登録ヘルパーの充足状況 資料:日本政策金融公庫総合研究所「訪問・通所介護事業に関するアンケート」(2015年) 資料:日本政策金融公庫総合研究所「訪問・通所介護事業に関するアンケート」(2015年)

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