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古川修の次世代自動車技術展望

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自動運転のありがたみへの疑問

芝浦工業大学 特任教授 古川 修 氏

 前回は、自動運転技術に過度な期待は禁物だと説明した。その考えに変わりはないが、自動車の技術開発に携わる者として、自動運転技術の真の発展には、むしろ願うばかりである。今回は自動運転技術が実現できたとして、それが社会にどのような利益や運転者にうれしさをもたらすのかについて考察してみたい。

自動運転の自動化レベルを分類し共通認識を

 まず、自動運転技術を自動化レベルで分類する基準化活動を紹介し、次に、それぞれの自動化レベルにおける自動運転のありがたみについて論証する。

 自動車の自動運転技術の実現性について、専門技術者や研究者と議論すると、意見が噛み合わない場合が多い。「今世紀の実現は無理だ」という意見もあれば、「近い将来には実現する」、あるいは「すでにもう実用化されている」と断言する人さえいる。

 確かに「自動運転」という言葉を聞いてイメージする機能は、人によって違いがある。かなり昔からあるクルーズコントロールによって速度を一定にして走ることも、自動運転と言えないことはないし、最近実用化された運転支援システム技術である「車線維持支援制御」や「被害軽減ブレーキ」なども、自動運転の機能が実現されたと捉えることができる。一方で、人間が全く操作をせずに走行できる「完全自動運転」でなければ自動運転とは呼べないという考え方もある。

 専門家同士でさえ、同じ自動運転という言葉から思い浮かべるシステムの違いは大きい。これがメディアや一般消費者になると、自動運転のイメージはさらに広がる。同じイメージで議論するためには、自動運転の「自動化レベル」に応じて分類し、それを共通の基準とすることが、もはや避けられないところにきている。

 「自動化レベル」とは、従来人間が行っていた運転操作のうち、どの程度を自動運転システムが肩代わりするかという度合いのことである。日米欧で個別に基準造りが進められており、それを国際的に統一するための議論がなされている。

 表1は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム検討委員会で設定した自動化レベルである。レベル1、レベル2では走行の安全責任はドライバーが負う。レベル3は、通常は自動運転システムが走行の安全責任を負うが、機能限界に陥った場合などはドライバーに運転の責任を移譲する。レベル4はすべての走行条件で自動運転システムが安全責任を負う完全自動運転機能を示す。

赤線が示すレベル2とレベル3の間には、運転責任の主体がドライバーなのかシステムなのかという大きな違いがある 赤線が示すレベル2とレベル3の間には、運転責任の主体がドライバーなのかシステムなのかという大きな違いがある

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