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石澤卓志の「新・都市論」

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湾岸は「テナントが居着く街」に変わるか

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 小池百合子氏が東京都知事に就任して以来、築地市場の移転延期や、東京オリンピックの競技会場の変更など、様々な問題が顕在化している。これまでの計画では、オリンピックの競技会場の約6割が湾岸エリアに配置される見込みだったため、築地市場の移転先である豊洲も含めて、これらの多くは「湾岸問題」と言える。東京オリンピックが不動産市場におよぼす影響については、すでに様々な視点から検討されているが、本稿では「湾岸問題」への影響を中心に考えてみたい。

インバウンド需要はオリンピック後が本番

 不動産事業者には「オリンピックが開催される2020年までは不動産需要は旺盛だが、2021年以降は需要が激減する」との見方が多い。政府は、2020年までに外国人観光客を、現在の2倍の4,000万人に増やす目標を立てているが、一般的には「オリンピック後は観光客が減少する」とのイメージが強いようだ。

 しかし、筆者は「不動産事業も、インバウンド需要も、2021年以降が本番」と考えている。過去にオリンピックが開催された国について、外国人観光客の推移を見ると、オリンピック後に観光客が増えた例が多いからだ。

図表1:オリンピック開催国における外国人観光客数の推移 注:△印はオリンピック開催が決定した年、○印は開催された年を示す。<br>

出所:国連世界観光機関(UNWTO) 注:△印はオリンピック開催が決定した年、○印は開催された年を示す。
出所:国連世界観光機関(UNWTO)

 図表1に挙げたアテネ(2004年開催)やロンドン(2012年)の他に、バルセロナ(1992年)、アトランタ(1996年)、シドニー(2000年)、トリノ(2006年、冬季)、バンクーバー(2010年、冬季)などの都市でも、オリンピック後は外国人観光客の増加ペースが向上した。中国は北京オリンピックの開催(2008年)が世界同時不況と重なったため、2009年の外国人観光客数が減少したが、2010年以降は大幅な増加に転じた。

 ただし、ソルトレイクシティ(2002年、冬季)では、オリンピック後に外国人観光客が減少してしまった。ソルトレイクシティは宗教関連、IT関連、鉱山資源、教育分野など、様々な点で特徴が多い都市であるため、来訪者についてはオリンピック以外の影響が、より大きかったと思われる。

 オリンピックによって、開催国や開催都市の知名度が向上し、交通アクセスや宿泊施設など、受け入れ態勢が整備された効果が、観光客を呼び込む原動力になったと考えられる。東京は英語圏の都市ではないため、これまで情報発信力が弱かった。東京オリンピックは、日本や東京の魅力を海外にアピールするチャンスと言えそうだ。

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