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クラフトビールでヒット連発、その「愛される仕掛け」とは?

熱狂顧客を育んだヤッホーブルーイングの快進撃

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

 ブランドは、こんなにお客さんに愛してもらうことができるのか!――

 マーケター人生20年の私の常識を大きく覆す衝撃の光景に出会ったのは、5月の北軽井沢のキャンプ場で開催された「よなよなエールの超宴(ちょううたげ)」と呼ばれる1泊2日のイベントだった。ここには、「よなよなエール」や「インドの青鬼」といったヤッホーブルーイングのクラフトビールをこよなく愛する約1000人の熱狂顧客たちが集結し、ヤッホー社員と顧客、そして顧客と顧客が、イベントを大いに楽しみ、愛するビールについて熱く語り合っていた。

 私はこれまで、顧客とブランド(企業)の「エモーショナルコネクション(感情的な結びつき)」が重要だと言い続けてきたが、まさかこれほど強い絆をつくり出せるとは、まったく考えていなかった。私の常識は――うれしいことだが――見事に打ち砕かれた。「企業・ブランドと顧客は、もっと近づき、もっと相思相愛になれるんだ!」。いまは強く、そう思っている。

 企業経営にとって、自社の商品を「好きで好きでたまらないくらい愛しているから繰り返し買ってくれている」という熱狂顧客がいかに大切な存在であるかは、以前のコラム『購入金額だけで「顧客を格付け」する愚行』で述べた。長く売れ続ける商品というのは顧客から「熱烈に愛される商品」であり、企業の経営を長期的に支えてくるのは「商品やブランドを熱烈に愛してくれる顧客」なのだ。

 今回はその事例編として、ヒット商品を連発するクラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」の熱狂経営術について考えてみたい。同社の井手直行社長がつくり上げた「熱烈に愛されるための仕掛け」とは一体どんなものなのか、井手社長への2度にわたるインタビューをもとに迫る。

8年連続赤字の「どん底」で見つけた手がかり

 ヤッホーブルーイング(以下:ヤッホー)は、1997年に長野県軽井沢町で創業したクラフトビールメーカーである。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションとし、社長自ら「僕らは知的な変わり者!」と宣言している、ユニークな会社だ。

 看板商品は、毎晩飲めるエール(ビール)というコンセプトの「よなよなエール」。皆さんも一度は飲んだことがあるかもしれない。製造量と販売量は、全国200以上のクラフトビールメーカーの中でダントツである。

<b>ヤッホーブルーイングが製造・販売するクラフトビール</b> 出所:ヤッホーブルーイング ヤッホーブルーイングが製造・販売するクラフトビール 出所:ヤッホーブルーイング

 ヤッホーは、かつての8年連続赤字から一転して、現在11年連続の増収増益(しかも年率30~40%成長)を続ける成長企業へと大変身したことでも注目されている。その変身の過程で生まれたのが熱狂経営術といえるだろう。

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