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経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

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ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

今回の悩める経営者:株式会社マルチ・シティズン 代表取締役 蓮田はすだつむぐ(48歳)
相談内容

 先生、これは、追及せずにはいられないでしょう!

 我が社が、数年前に開発した特許技術「ブーメランノックアウト」がパクられたんですよ! この技術ですが、ネットで悪口書き込まれた場合、例えばですね、「おめえ、名前が変」とか、「お前、いったい、どこの国の人間やねん」とか、「やっぱ、スパイすか」とか、あることないこと書かれた場合、それも、すんごい数書かれた場合、先生ならどうします?

 え? ほっとく? それではだめでしょ! 責任ある組織の、責任ある人間として、そこはスルーはないでしょう!

 で、ですね、開発したんです。寝ている間も、お化粧している間も、お化粧を落としている間も、台湾とかに旅行に行っている間も、役場に行ってる間も、法務省とかに呼ばれている間も、私がな~んにもしなくても、このシステムを入れておけば、勝手に、悪口いったり、くだらないことをいってdisるようなネット上の掲示板の投稿者に、ブーメランのごとく、投稿者へのコメントを書いておいてくれる、人工知能を搭載した影武者というか、分身なんです。

 それも、この「ブーメランノックアウト」の心臓部を構成する人工知能エンジンは、何と、「下品で、下劣で、姑息で、卑怯で、その割に、他人の足を引っ張るのだけは忌々しいくらい上手な、ゲスの極みともいうべき、ネット住民たち」の「コメント返し技」のデータを自己増殖的に吸収し、深層学習し続け、どんどん、「返しスキル」が発達する、という優れもの。

 そうしたら、中堅広告代理店が、東大卒の有能な若手社員のチームを結成し、連日連夜、徹夜させるわ、死に物狂いで働かせるわで、もう必死になって対抗しはじめ、なんと、ウチの「ブーメランノックアウト」の、パクリソフトをリリースしたんです。

 「煽り(あおり)優(ゆう)」って、ふざけた名前なソフトで、「こちらも自動で検知したdisり投稿に対して、煽りを入れて、投稿した人間を小馬鹿にする」という、まあ、ほぼパクリです。

 特許はこっちがすでに登録済みです。といっても、当初、特許審査官から「ソフトウェア特許って、そもそも難しいんスよね~。似たような先行技術は山ほどあるし、こんなの無理に決まってます」とかボロクソにけなされたんですが、特許庁OBの大物弁理士に依頼し、あの手この手を使って、あちこち補正しまくって、さらに、無理やりゴリ押しして、勝ち取ったんです。

 しかも、リリースは、こっちが、1番で、あっちは2番。2番じゃダメに決まってるじゃないですか!

 相手に、内容証明郵便の警告書を出して恫喝したんですが、逆に、特許審査でもネチネチ指摘された先行技術をまるごと指摘されて、「こんなの特許じゃないでしょ。エセ特許ですよ。それ以上騒ぐと、無効審判申し立てしますよ」と脅される始末。

 もう、我慢なりません。先生、早急に、裁判所に申し立て、差し止めと損害賠償を食らわせてもらいましょう!

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