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農協改革・農地改革をどう進めるべきか

キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下一仁 氏

 独占禁止法では、共同して生産したり販売したりすることなどで競争を制限するカルテル行為は、原則として禁止されている。しかし、小規模事業者などが協同組合を組織する場合には、独占禁止法の適用除外となっている。

農協による生産調整(減反)は独占禁止法違反

 単独では大企業に伍して競争していくことが困難な、小さい農家、事業者や交渉力の弱い消費者も、共同して生産や販売、購入をすれば、形式上は独占禁止法に違反することになる。したがって、このような事業者などが互いに助け合うことを目的として協同組合を組織した場合には、独占禁止法の適用を受けないようにして、市場で有効に競争したり取引したりすることができるようにしたものである。あくまでも小規模事業者の救済のための規定である。

 具体的には、独占禁止法第22条で、

(1)小規模事業者または消費者の相互扶助を目的とし、
(2)任意に設立され、組合員が任意に加入または脱退することができ、
(3)各組合員が平等の議決権を有し、
(4)組合員に対する利益の分配の限度が法令または定款に定められている

 という要件を備えた組合および連合会の行為には、独占禁止法を適用しないとしている。

 なお、これらの組合であっても、ほかの事業者と共同して特定の事業者との取引を拒絶したり、共同行為からある事業者を不当に排除したりするような「不公正な取引方法を用いる場合」または「一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引上げることとなる場合」は独占禁止法が適用されることになっている。

 逆に、独占禁止法第22条によって協同組合が独占禁止法の適用を受けない行為の1つは、他の事業者の事業活動を排除し、または支配することによって、一定の取引分野における競争を実質的に制限する(「私的独占」)場合であり、もう1つが、他の事業者と共同して価格を決定したり、数量などを制限するなど、互いに事業活動を拘束することによって、一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合、つまりカルテルの場合である(減反[生産調整]は、カルテルそのものである)。

 100円の農産物価格を150円にすれば、「不当に対価を引上げる」こととみなされて独占禁止法違反となるが、110円程度に引き上げる場合にはカルテルとされ、協同組合は独占禁止法違反を問われない。

 実は、准組合員を持っている農協は独占禁止法第22条の要件を満たさない。准組合員は(1)の事業者ではないし、(3)の議決権を持っていない。つまり、准組合員を有する農協は、独占禁止法第22条の(1)と(3)の要件を満たさないので、本来なら独占禁止法の適用除外規定の対象とならない。このため、農協法第9条が、農協は独占禁止法第22条の(1)と(3)の要件を備えるものとみなすと規定して、これを救済している。みなし規定とは、そうでないものをそのように扱おうというものである。どんな地域の農協にも准組合員はいる。つまり、農協法第9条がなければ、農協には独占禁止法が適用されてしまうのである。

 さらに、20の単協(末端の単位農協)があって1つの経済連という県の連合会を構成している場合、20あるうちの3つか4つの単協が連合したらカルテルになってしまうのに、20の単協をまとめた連合会が価格などを決めると、これは独占禁止法の適用除外になってしまうという制度的な問題がある。山形県の5つの農協が米の販売手数料でカルテルを結んだとされる事件では、山形県の連合会や全農が共通の販売手数料を決定していれば、違反を問われなかった。ということは、大きければ大きいほど独占禁止法の適用除外になってしまうし、連合会を作ったり、維持したりするインセンティブが農協に生じてしまうことになる。

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