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第三者委員会が果たすべき役割と世の中の「誤解」

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 企業不祥事が起きた場合に、独立した第三者による調査委員会、通称「第三者委員会」を設置して調査を依頼し、問題の経緯・原因を明らかにすることは、企業の危機管理の有効な手段の1つだ。ところが、その第三者委員会の活動が,かえって社会からの信頼を失わせる方向に働き、問題とされるような事例が相次いでいる。

 例えば、不正会計の問題で設置された東芝の第三者委員会は、会社執行部の意向を受け、監査法人による会計監査の妥当性や原発子会社の減損問題を調査対象から外し、問題の本質を隠蔽しようとする執行部に加担し、いわば「隠れ蓑」のような役割を果たした。

 東京電力の福島第1原子力発電所の事故における対応に関する第三者委員会は、直接的な証拠もなく、それを解明するための十分な調査も行っていないにもかかわらず、あまりに粗雑な"依頼者寄りの推認"によって、東京電力が当時「炉心融解」の事実を認めなかった背景には「官邸からの指示」があったとする、依頼者に有利な事実認定を行った。

 そのほか、第三者委員会そのものではないが、舛添要一前東京都知事の政治資金問題に際しても、「第三者の弁護士による調査」が行われたものの、舛添氏の弁解をなぞったような調査で「違法ではないが不適切」という文言を繰り返した。これは世の中の反発を招き、結果的に舛添氏の都知事辞任の流れを加速させた。

根拠のない「お墨付き」としてのJOC調査報告書

 直近の事例では、2020年開催予定の東京五輪・パラリンピックの招致活動において、日本の招致委員会から不正な支払いが行われた疑惑があるとしてフランス検察当局が捜査を開始したことを受け、日本オリンピック委員会(JOC)が第三者による外部調査チームを設置した。

 そして、9月1日に招致委員会側の対応に問題はなかったとする調査報告書が公表された。フランスで捜査が進行中であり、今後起訴される可能性があるという段階で、国内で行える調査だけで結論を示したということになるが、その調査はあまりに不十分で、根拠となる客観的な資料もほとんど示されていない。

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