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戦略的コーポレートファイナンス

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配当すべきか否か、アップルも悩んだ

一橋大学 中野誠 氏

土曜の朝、中野教授の研究室で、コーポレートファイナンスを学ぶ「3人だけのゼミ」が始まった。ゼミ生は、証券会社の投資銀行部門に就職したばかりの令子さん(中野ゼミの卒業生)と住宅メーカーの竹之内社長(技術系出身、令子さんのおじ)の2人。今回のテーマは「ペイアウト(配当・自社株買い)政策」だ。中野教授のもとで基本的な理論を学んだ後、ペイアウト政策の明暗について米アップルの例を見ていく。


中野教授「授業を始めます。今日はペイアウトに関する竹之内社長の疑問を一緒に考えていくことにしましょう」

竹之内社長「よろしくお願いします」

令子さん「センセイ、初歩的なところからお願いします」

中野教授「それでは竹之内さん、まずは素朴な疑問からお願いします」

竹之内社長「はい。まず、増配を要求する株主様がいらっしゃいますが、そもそも配当をすると株主は得をするのでしょうか?」

令子さん「おじさん、それ当たり前だよ。配当もらったら、うれしいに決まってるじゃない」

中野教授「うーん、令子さん。大学時代、ちゃんと勉強してたのかなぁ」

令子さん「え? センセイ、そのつもりですが......。よく分かりません!」

中野教授「令子さん、本当に投資銀行部門で働いているのですか?」

令子さん「......」

基本としてのMM 配当無関連命題

 「企業が配当をすると株主は得をするのか?」

 これは、本質的な質問です。分かりやすく説明するために、仮設例を使います。以下のようなX社を想定します。余剰現金が100億円、事業資産の現在価値が100億円。これがバランスシートの左側です。分かりやすくするために負債は無しとします。

<b>配当前のバランスシート</b> 配当前のバランスシート

 すると、株主価値は200億円です。発行済み株式数は1億株です。1株あたりの現在価値は200円となります。なお、ここでのバランスシートは会計上のものではありません。すべて現在価値で表示されていると考えます。また、株式市場の評価も適正であるとします。

 さてここで、X社は余剰現金の半分、つまりは50億円全額を配当に回すことにしました。1株あたりでいうと50円の配当です。さて、X社の株価は上がるでしょうか?

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