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米軍式 人を動かすマネジメント

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なぜF86は高性能のミグ15に勝利できたのか?

田中公認会計士事務所 所長 田中靖浩 氏

戦闘では「視野の広さ」と「軽い操作性」が重要

 このように何度となく「観察・方向付け・決心・実行」を繰り返すのがOODAループです。パイロットは、このループを敵よりも早く回すことで敵に対して位置的・時間的・精神的に優位に立つことを目指します。

 OODAはパイロットの思考回路を表現する「人間中心」のループです。ボイドは「どんな機械も操作するのは人間である」という基本に立ち返りました。性能のよい戦闘機や戦車などの兵器も、それを操縦するのはすべて人間です。だとすれば、兵器を操縦する敵を「動けない」状況に追い込めば、それだけでも勝つことができる、ボイドはそう考えました。

 そのためには敵をスピードで圧倒し、精神的な優位性を保たねばなりません。敵を観察し対応するスピードが上がれば、奇襲を繰り出す余裕が生まれます。人間の思考スピードのほうが、兵器の物理的な性能より重要な要素である。よって戦闘機では最高速を追求することより、「視野の広さ」と「軽い操作性」が重要だとボイドは見抜いたのです。

 OODAループは、20世紀後半における重要な発想の転換です。工業化の20世紀は自動車や家電製品だけでなく、軍事においても多くの武器兵器を生み出しました。テイラーが科学的管理法を発案した頃、まだ戦場に戦車や戦闘機の姿はなく、銃をもつ兵士たちが戦いの主役でした。

 戦車が登場し、戦闘機が本格的に運用されたのは第一次世界大戦のことです。ここから戦いが大きく変わりました。戦車や戦闘機は圧倒的な破壊力をもちます。第一次大戦以降、兵器の性能が飛躍的に向上していくなかで、戦いの主役は人間ではなくなり、性能の良い兵器マシンになっていったのです。

 しかしジョン・ボイドは、OODAによって戦いの中心を再び人間に戻しました。

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