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「カビ型行為」こそが企業不祥事の「問題の核心」

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 連載2回目の今回は、企業の不祥事やコンプライアンス問題を「ムシ型」と「カビ型」という観点から分類し、日本型とも言える「カビ型行為」の特徴とその恐ろしさについて考えていく。

カビ型行為は組織の中で恒常化している

 「ムシ型行為」とは、個人の利益のために、個人の意思で行われる単発的な行為をいい、「カビ型行為」とは、組織の利益のために、組織の中で長期間にわたって恒常化し、何らかの広がりをもっている行為をいう。個人が組織の中のある一定のポストに就くと、好むと好まざるとにかかわらず、そういう違法行為に手を染めざるを得ない状況に置かれてしまう。この場合、目的は個人の利益ではなく、組織の利益だ。

 「ムシ型行為」に対しては、害虫に殺虫剤をまくのと同様に、違法行為を行った個人に厳しい刑罰を科すのが適切な処置となるが、「カビ型行為」に対しては、「ムシ型」のように殺虫剤をまく、つまり、かかわった個人を厳罰に処するような方法は全く意味をなさない。

 カビをなくすためには、カビの広がりと、カビが生えた原因(「汚れ」か「湿気」か)を明らかにして、それを除去しなければならないように、「カビ型行為」の広がりを明らかにして、原因となった構造的な問題を是正しなければ、解決することはできない。それまで継続的・恒常的に行われていたカビ型行為の事実をすべて表に出した上で、それを前提にして、解消のための方策を講ずることが不可欠となる。

 違法行為が長年にわたって恒常化している場合、かかわった者の中に違法行為を行いたくないと考えた者がいたとしても、違法行為を行わないためには、過去に恒常的に不正を行っていた事実を表に出さなければならない。それによって、それまで現場で不正を実行してきた関係者達が重大な責任を問われることになりかねない。

 その際、ほかでも同様のことが行われている、というような弁解は通用せず、「法令順守」に反したということ自体をもって問答無用の非難の対象となることは、過去の多くの不祥事が示すところだ。

 以上のような「カビ型行為」の難しさを端的に表す事例として、ステンレス鋼管データ捏造(ねつぞう)事件がある。

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