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佐藤可士和のクリエイティブシンキング

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ビジョンを形にしてデザインに付加価値

アートディレクター/クリエイティブディレクター 佐藤可士和 氏

 昨今、ビジネスの現場で、「デザインが重要だ」という言葉がずいぶん多く聞かれるようになってきました。しかし、その本質はまだまだ正しく理解されていないような気がしています。一般的には、「表面を美しく飾り立てる」という認識もまだ根強いのではないでしょうか。

デザインはソリューション

 確かに以前はそのような狭義的解釈もされていましたが、これだけ情報社会が進化する中、「機能だけが本質価値」で「デザインは付加価値」と分けて考えるのは非常にコミュニケーションの効率が悪く、もっとデザインを広義に捉え、その力を戦略的に活用していく必要があります。

 デザインとは、問題を解決するために思考や情報を整理して、コンセプトやビジョンを導き出し、最適な形にして分かりやすくその価値を伝えていく行為です。「デザイン=表層的な形や美しさを作ること」と思われがちですが、デザインを"ソリューション"として捉えるべきだと思います。単なるひらめきや思いつきだけで作られたものは、一見、格好良く見えたとしても、長く人の心に残るものではないでしょう。そういうものは、本当の意味ではデザインされていないと言ってもいいのかもしれません。

 以前、コラムニストの天野祐吉さんと対談した際に、「外見と中身を分けて考えている人がいるが、外見は一番外側の中身なんです」とおっしゃっていましたが、これは、デザインの本質を突いた言葉ではないでしょうか。中身の考え方を正しく表に表せているものが、デザインされたものということなのです。

 iPodやiPhoneなど、ここ数年で発売されたアップルの一連の商品は、デザイン本来の力が鮮やかに発揮されている好例です。明快なコンセプト、美しいプロダクトデザイン、機能性と操作性抜群のインターフェイス、iTunesやAppStoreなどのサービス、パッケージデザインから広告キャンペーン、そしてブランド世界を体現するリアル店舗であるアップルストアまで、すべてクオリティの高いデザインによって一貫したフィロソフィーが表現されています。

 プロダクトデザインだけ、機能性だけといったことではなく、ブランドイメージを含めたすべてで本質価値なのだということを見事に実現している姿は圧巻です。MP3 音楽プレーヤーやスマートフォン自体はほかにもたくさんありますが、アップルの製品がその代名詞となり世界的なヒットに結びついているのは、消費者の鋭いセンサーが無意識のうちにそれをキャッチしているからではないでしょうか。

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