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佐藤可士和のクリエイティブシンキング

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記憶の検索エンジン磨いて表現力アップ

アートディレクター/クリエイティブディレクター 佐藤可士和 氏

 自分の頭の中のイメージを的確に伝えようとする場合、言葉を使うにしてもビジュアルで表すにしても、できる限りたくさんの表現方法を持っているに越したことはありません。豊かな表現は、相手により正確に、鮮やかにイメージさせることができます。そのイメージは、記憶の組み合わせによってできていくものです。

気になることにタグを付ける

 つまり、表現するということは、記憶をコントロールし、組み立てていく作業であるとも言えます。その記憶は社会的な記憶であったり、個人的な記憶であったりしますが、表現するためには、まず自分の脳の中から的確に記憶を呼び起こす必要があります。

 僕の場合、何か気になるものに出会うと、写真やメモをとるよりも早く、脳のアーカイブに入っていくようです。2005年から手がけている、リサージというスキンケアブランドの仕事もそうでした。ブランディングの一環として商品デザインのリニューアルを行ったのですが、特許を取得している技術や品質には定評があるにもかかわらず、それが伝えきれていないブランドだったので、商品の良さやそのフィロソフィーがひと目で伝わるようにしたいと思いました。

 真摯で誠実なブランドならではの機能美をアピールするべきではと考えていた際にひらめいたのが、「化粧液の容器デザインを、従来のポンプ式ではなくトリガー式にしてはどうか?」ということでした。トリガー式とは、霧吹きなどによく使われている、水鉄砲のように握って発射するシステムのことです。トリガー式は非常に少ない力でラクに中身の液体が出せるため機能的には優れているのですが、美しい形のものやエレガントなイメージがなかったため、化粧品ではほとんど使われることはありませんでした。

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