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心を鷲づかみ、五輪招致かなえた感動の黄金律

湘南ストーリーブランディング研究所 川上徹也 氏

 何かを人に伝えるとき、「ストーリーとして語る」ことは非常に効果があります。なぜなら、ストーリーには人の感情を揺さぶる力があるからです。どんな仕事も、相手の感情に訴えることによって大きく進展していきます。ストーリーの活用は営業力、交渉力、企画力、プレゼン力、 コミュニケーション力など、ビジネスの色々な分野で役に立ちます。

東京オリンピック招致に「ストーリーの黄金律」が使われた

 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで2020年の夏季オリンピック開催地を決めるIOC総会が開かれました。この総会でオリンピック招致を決めた「東京」の最終プレゼンテーションのことは、まだ皆さんの記憶に強く残っているでしょう。

 実はこのプレゼンテーションで、「ストーリーの黄金律」(詳細は後述)が非常にうまく使われていたのです。特に、プレゼンの一番手を担ったパラリンピック選手の佐藤真海さんのスピーチは、黄金律に沿った物語でIOC委員のハートを鷲摑みにしました。

 佐藤さんのスピーチはまず以下のような言葉から始まります。

 私が今ここにいるのは、スポーツによって救われたからです。スポーツは私に人生におけるたいせつな価値を教えてくれました。それは、2020年東京大会が世界に広めようと決意しているのと同じ価値です。

 そして彼女は自分の人生を語り始めます。以下、その要旨を記述します。

 陸上のランナーでチアリーダーでもあった私は、19歳の時いきなり骨肉腫を宣告され、自分の足を失った。絶望の淵から救ってくれたのは、大学で始めた陸上競技だった。目標を決めそれを越えることに喜びを感じ、アテネ、北京の両パラリンピックに出場した。

 しかしロンドンを目指していた私に再びショックな出来事が起こる。2011年3月11日の東日本大震災。故郷の町が津波に飲み込まれてしまった。家族の無事が確かめられたのは6日後。私は色々な学校からメッセージを集め、食料とともに故郷に帰った。

 そこで目の当たりにしたのは私と同じように、被災地で支援活動を続けるアスリートたちの姿だった。200人を超えるアスリートたちが、日本や世界から、被災地に約1000回も足を運んだ。

 私は「スポーツの力」を再発見した。

 それは、新たな夢と笑顔を育む力であり、希望をもたらす力であり、人々を結びつける力だったのだ。

 まさに「ストーリーの黄金律」に沿った、感情に訴えかけるストーリーがそこにはありました。佐藤さん自身のストーリーと「日本」のストーリーが、うまくシンクロしているのも秀逸です。

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