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協力:日本マイクロソフト

日本マイクロソフトが考えるICT時代の社会貢献(後編) ITがもたらす恩恵を全ての人に届けたい

スサンナ・マケラ 日本マイクロソフト 執行役 政策渉外・法務本部長に聞く

 環境破壊や貧困問題、少子高齢化や震災からの復興・・・。国内外で今、さまざまな社会課題が山積し、深刻の度合いを増している。私たちの社会や生活に深く浸透するようになったICTは、そうした課題に関係者が一丸となって向き合ううえで、どのような役割を果たすことができるのだろうか。昨年12月、社会貢献活動のための新組織"Microsoft Philanthropies"を立ち上げ、世界規模で取り組みを加速しているマイクロソフトの2人のキーパーソンに、グローバルなIT企業が目指す社会貢献のあり方を聞いた。(【前編】樋口泰行 代表執行役会長インタビューはこちら

将来を見据えた雇用環境の整備や人材育成が重要

――スサンナさんのご出身であるフィンランドは、先進的な教育や環境政策で知られています。来日されてまだ1年足らずですが、日本マイクロソフトの社会貢献活動を主導される立場から、「課題先進国」と言われる日本の現状について、どのような印象をお持ちですか。

<b>スサンナ・マケラ氏</b> 1995 年ジャムサ地方裁判所裁判官研修プログラム(フィンランド)、サンタラ法律事務所弁護士。パーキン エルマー(ウォラック)、ダニスコ(デュポン)のリーガルカウンセルなどを経て、2002年ノキア入社。同シニアリーガルカウンセル(米国)などを経て、2014年マイクロソフト モバイル フィンランド アシスタントゼネラルカウンセル。2015年7月より現職。 スサンナ・マケラ氏 1995 年ジャムサ地方裁判所裁判官研修プログラム(フィンランド)、サンタラ法律事務所弁護士。パーキン エルマー(ウォラック)、ダニスコ(デュポン)のリーガルカウンセルなどを経て、2002年ノキア入社。同シニアリーガルカウンセル(米国)などを経て、2014年マイクロソフト モバイル フィンランド アシスタントゼネラルカウンセル。2015年7月より現職。

 確かに日本はいくつかの課題で先行していますが、日本だけが特殊な課題に悩まなくてはいけないわけではありません。高齢化を例にとると、私の母国も今まさに同じような高齢化と労働力の減少に直面しています。

 その意味でアベノミクスは、政府として、今後日本が成長していくために何が必要なのかを明確に示していると思います。大切なのは、そこで謳われているビジョンを「どう実現するか」です。例えばアベノミクスは「女性の活躍」を掲げていますが、それを実現するには保育の充実や、女性の社会復帰を支援するネットワーク、働きやすい環境といった包括的な「枠組み」が不可欠です。

――海外の実践から日本が学べることも多いということでしょうか。

 例えば、人口が高齢化すると、新しい労働力を生み出すことが必要になります。これまで働けなかった人たちが働けるようにするためには、雇用環境や労働環境を見直し、既存の構造を変えていかなくてはなりません。

 日本は世界的にも長時間労働で知られていますが、企業として本当に欲しいのは、長時間働いてくれる人ではありません。短時間で効果的にインパクトを生み出せる人材です。私はリーダーとして、これまでさまざまな人たちのマネジメントにあたってきましたが、最も生産性が高い人材は、概して小さな子供がいる人たちでした。彼らは限られた時間しかないので、その中で最大限の成果を生み出してくれます。

 ある人が12時間かけている仕事を7時間でこなす、あるいは仕事の一部をオフィスではなく家でやることで、健康的で充実した生活を送ることができるなら、それに越したことはないでしょう?ストレスが強い労働環境だと早く引退しなくてはならないけれど、健康ならもっと長く働くこともできます。フィンランドには、女性に限らずそうした多様な働き方を支援するための枠組みがあります。

――日本は教育にかける予算が少ないうえに、教育現場でのITの利活用も遅れています。教育分野でも、海外から学ぶべきことは多いのではないでしょうか。

 国の将来を担う人材をどう育てるかは、日本に限らず、世界各国の重大な関心事です。日本の教育政策について私が細かく言う立場にはありませんが、この分野で改善の余地があるということは、水準を向上させる大きな機会と可能性があると捉えることもできます。子供たちが将来生き生きと働き続けられるようにするためには、どのようなスキルが必要になるかを考えると、必然的に、探究心や冒険心、言語能力を開発するような方向へのカリキュラムの見直しが課題に上ってくるはずです。

 子供たちの将来のためにどんな準備をするべきか、フィンランドの事例を1つ紹介しましょう。フィンランドの小学校では、先生に算数を教えてもらうのではなく、子供同士が教え合うという試験的な取り組みを始めています。最初は戸惑う子もいたようですが、誰も教えてくれないと彼らは自分で考えるようになり、やがて考える面白さに目覚め、助け合うことも励みになり、ぐんぐん伸びていく。子供同士のやりとりを通じて、他の子に教える能力や相手を理解する力など、さまざまなスキルも身に付くということで、この試みは非常に注目されています。

 今後、ルーティンの仕事はどんどんロボットに置き換わって、人間はより複雑な、解のない課題に立ち向かわなくてはならなくなるでしょう。そのときに本当に必要なのは、このように自ら考えて、周りの人と協力し、道を切り開いていけるスキルであり、人材なのではないでしょうか。

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