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「みやじ豚」SNS世代が変える農業

月100頭の稀少豚 宮治勇輔氏の挑戦

  「宮治さんの作る豚は、やっぱり美味しい」。生産者が丹精込めて作った食材を、消費者から直接「おいしい」と言われたい、という願いは自然なものだろう。しかし、今の日本では農産物流通の仕組みが複雑で難しい。この課題を克服し、大きなイノベーションを生んでいる若手農業家がいる。神奈川県藤沢市にある、みやじ豚社長の宮治勇輔さんだ。厳選した豚を月に100頭しか出荷せず、食べられる場所も限定することでブランドを確立。新たな畜産モデルに惹かれ、20代、30代の若者が宮治さんのもとに集まる。みやじ豚の成功の秘密とは何か。

日本の流通は進んでいる

みやじ豚は月100頭のみ出荷する みやじ豚は月100頭のみ出荷する

 宮治さんは1978年、養豚農家の長男として生まれた。慶応大を卒業後、人材派遣会社のパソナに入社、4年3カ月の勤務を経て家業を継ぐために退社する。実は、それまで実家を継ぐつもりはなかった。30歳までに起業したいが、農業だけは絶対にいやだ――。「きつい、汚い、かっこ悪い」にくわえ、「くさい、稼げない、結婚できない」が加わった6K産業だと思っていた。

 宮治さんを実家に戻らせたのは、「農家のこせがれDNA」。起業をめざし毎朝5時に起きて勉強しているうちに、気がつくと農業の本ばかり手に取る自分に気がついた。「これまでの農家は生産から出荷までしかしなかった。しかし、生産からお客さんが口に入れるまで農家が一貫してプロデュースできれば、とても面白い。やってみたい」。宮治さんが今、さまざまな場面で使うキャッチフレーズが生まれたのもこのときだ。「一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業に」。実家に戻ることを決めた。

 日本の農業は遅れている――。果たして本当にそうだろうか。宮治さんは、「日本の農業のバリューチェーンは世界で類を見ない素晴らしいモデル」だという。消費者は、スーパーに行けば一年中安く、安心・安全な農産物が手に入る。地域の産地、農協の市場、卸しの仕組みが整っているからだ。

 日本の農家の大半は、販売をする必要がない。市場がすべての農産物を買い上げ、問屋が豚肉を大手スーパーや外食チェーンを含む流通経路に乗せてくれる。多くの養豚農家の場合、生きた豚を市場を通じて一次問屋に買い上げてもらう。豚は屠畜場に持ち込まれ、枝肉にする。職人が骨を抜き、一頭そのまま販売する。買い手は、二次卸業者、大手スーパー、大手外食チェーンなどが多い。そこから消費者の口に入る流れだ。

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