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新しい大人消費が日本を動かす

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ヒット構造に異変「大人から始まるブーム」に沸く

博報堂 阪本節郎 氏

 人口構造の劇的な変化に伴って、消費の常識や消費行動が変化し、ヒットの構造も大きく変わろうとしている。ついこの間まで、「ヒットは若者から」は常識中の常識であった。渋谷のセンター街やマルキュー(渋谷109の略)が一世を風靡した。まさにシブヤは発信源であった。しかし、街を発信源として若者主体で起きるブームは少なくなった。代わってテレビの「あまちゃん」「半沢直樹」や「マッサン」が社会現象になるようになった。これらは、いずれも50代以上が視聴率を押し上げ、話題になった。とくにここ2~3年その傾向が顕著になってきた。

 こうした時代の変化・人口構造の変化に対応する「ヒットの構造」の変化は何か、4つのパターンを紹介したい。それは同時に、これまで若者向けビジネスで先端を走っていたとみられていた企業が、新しい大人向け市場の先端を走り始めたことも意味し、合わせてご紹介したい。

パターン① 50・60代男性から40・30代へ

 CD・DVDレンタルのTSUTAYAは、若者に圧倒的な支持を受けていたが、人口構造の変化に伴い、50・60代の先進層に向け、ライフスタイル提案型の新業態、T-SITE/蔦屋書店を、2011年12月、東京・代官山にオープンさせた。

 それまでの書店の売り場構成は新書・文庫・ハードカバーだったが、音楽本・シネマ本・旅行本などのように、ライフスタイル別に並べ、書籍とともに物品も扱う構成にした。同社ホームページによれば、1983年にTSUTAYAの原点となる蔦屋書店が大阪・枚方市に誕生、そのときに目指したのが、「本、映画、音楽を通して、若者たちにライフスタイルを提案すること」だった。

 当時の若者は若者ではなくなった。彼らに対し「今一度ライフスタイルを提案」し、「おとなのための文化の牙城」をつくることをめざした。同じ世代だけではなく、若いクリエイターも集まって文化的な化学反応が起き、孫と楽しい時間が過ごせるような、新しい場として代官山蔦谷書店を開業したという。

 「ライフスタイル別の売り場」とともに、料理・旅行など専門の生活ジャンルに詳しい「コンシェルジュ」を置き、お客さんのどのような相談にも乗れるようにした。また店内にはスターバックスと「座れるスペース」がいたるところにあり、コーヒーを飲みながら書店にある本を自由に読める店にした。この蔦屋書店は、北海道・函館や神奈川・湘南、埼玉・浦和、大阪・梅田などに拡大中である。

 そして、同社によれば、TSUTAYA全体での書籍売上は、2012年1097億円でリアル書店で最大級となった。2013年4月から2014年3月では1157億円となり、同社のDVD売上高を上回ったという。

 50・60代先進層というのがそもそもの起点であるが、いまや40・30代へと広がり、客層としてはそちらのほうが多い。つまり、50・60代先進層を狙った書店を開発したことによって、それに共感する40・30代へ広がったのである。50・60代の「新しい大人」がヒットの起点になったのだ。

 また、avexも後述のように新オトナラボ「avex life design lab」を2015年10月に立ち上げた。TSUTAYAとavexという若者から圧倒的な支持を得ていた企業がいま、新しい大人向け市場の先端を走り始めたのである。

パターン② 50・60代女性から30代・若者へ

 「50・60 代から若い世代へ」という流れを最初につくったのは、女性である。それは以前紹介した韓流ブームだ。韓流は2003年にNHK BSで放送され、2004年にNHK総合テレビで再放送された「冬のソナタ」に端を発している。それ以前には影も形もなかった。50・60代を中心にその前後の多くの女性がテレビにくぎ付けになった。夫も仕方なくその横で見ているという具合だった。

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