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新しい大人消費が日本を動かす

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巨大な大人市場を読み解く「人間関係の変化」

博報堂 阪本節郎 氏

 『突如、テレビ視聴率を左右し始めた大人世代』で記したように、2014年1月9日付日経朝刊に、「シニア(60歳以上)消費 伸び鮮明 個人消費の46%に」という記事が掲載された。単純に人口比で換算すれば、50歳以上消費は個人消費の約60%にもなる。それはここ数年の特異な現象ではなく、これからますます50歳以上の消費の割合は増えていく。

 50代以上の世帯は従来の標準世帯とは大きく異なっている。「子供の独立」と「定年退職」を大きな契機に、女性は50代から、男性は60代から本格的に次のライフステージに入る。一旦ファミリーを卒業して「ひとり」「夫婦二人」「仲間」「母娘と3世代」という新たな人間関係に入っていく。ここでは、その人間関係について詳しくみていきたい。

50代以上は「ひとりの大人の男性・女性」になる

 まず「ひとり」である。50代以上の女性は子育て中心の生活から解放されて「ひとりの女性」に戻る。ここ数年発刊された50代女性向けの雑誌は象徴的だ。今までは主婦誌であり、ミセス誌であった。それが最近の新刊はいずれも「女性誌」なのである。『HERS』『エクラ』『大人のおしゃれ手帖』などである。『HERS』2016年1月号の特集は「50歳の誓い!」であり、2月号は「HERS世代が本当に似合う服」だ。

 男性も定年が近づくにつれ「ひとりの男性」になる。今まではサラリーマンと父親だったが、自分の趣味を探すようになる。男性の場合は「趣味誌」が50代以上男性誌の定番である。『サライ』『一個人』『Pen』などである。グルメ誌としての『大人の週末』や『dancyu』などもそうだ。男性ファッション誌としては『LEON』や『MADURO』などである。

 「ひとりの男性」「ひとりの女性」に戻るというのは大きな意味を持っている。わが国の場合は、これまで30歳を過ぎれば、男は「サラリーマンと父親」、女は「主婦と母親」という二つの顔を持ち、それが全てであった。一人前になる、社会人になることは、大事なことではあったが、ややもすると個人がどこかへ行ってしまい、「良き組織人」「良き家庭人」が全てとなり、人生のゴールであった。

 したがってその後は余生に過ぎなかった。ところが、「子供の独立」「定年退職」を契機に「個人としての大人」になり、ひとりの「大人の男性」「大人の女性」になるという次のステージに向かうようになった。わが国では「個人としての大人の生活」があるようでなかったが、ようやく、50代以上の人口ボリュームが大きくなることで、それが社会的にも目に見えるようになりつつある。

50代の「夫婦すれ違い」から「素敵な大人の二人」へ

 そして50代以上は「夫婦二人」が基本的な単位となる。ここに大きな問題と機会がある。

 大きな問題は「夫婦すれ違い」である。「生まれ変わってもいまの配偶者と一緒になりたいか」という質問に、40~60代の男性の46.9%はいまの奥さんと一緒になりたい、と答えているが、女性の27.9%は、生まれ変わったらできれば別の方とご一緒に、と答えている。

 なぜそうなるのか、といえば、この年代の多くの男性が「家事と育児にタッチできなかったこと」がそのギャップを生んでいる。ではこれは修復不可能なのだろうか。実は現在60代の団塊世代はまだら模様で「夫婦歩み寄り」が始まっている。それは当研究所の調査で、男性、とりわけ団塊世代を中心とする60代男性が最近配偶者との間で増えた時間として、「夫婦で食事」「夫婦の会話」「相手の話を聞く」「普段の買い物に行く」といった項目がいずれも高いことに表れている。

<b>男性は妻と間での時間が増えたと思っているが女性はそうでもない</b><br>(出所)博報堂新しい大人文化研究所調査、2012年、40~69歳男女、全国2700人対象。 男性は妻と間での時間が増えたと思っているが女性はそうでもない
(出所)博報堂新しい大人文化研究所調査、2012年、40~69歳男女、全国2700人対象。

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